総合評価 75点/100点
2077年、地球は『スカブ』と呼ばれるエイリアンの侵略を受ける。人類は各国が連携して総力を挙げた核兵器による反撃を行い、地球は侵略と放射能汚染によって滅亡したが、人類はその生存可能領域を他の惑星(土星の衛星タイタン)に求めて何とかテラフォーミング(惑星間移住)に成功していた。
文明が破壊されて放射性物質で覆われ荒れ果てた地球には、定期的に二名の監視員が派遣されて長期の地球パトロールの特殊任務に当たることになった。二名の監視員は男女二人で構成されて、元々は恋人や夫婦ではないのだが、本国(人類の新拠点タイタン)から遠く離れた赴任地の地球において擬似夫婦(パートナー)として暮らすことで、長期の惑星外活動のストレスを調整する仕組みになっている。
本国の上官からも定期的な連絡があり、二人だけで長期間地球で暮らすストレスに配慮して、『パートナーとの仲は上手くいっているか・日々の任務遂行に問題はないか』というメンタルケアの質問が多くなされ、ヴィクトリアは定型的なやり取りの雰囲気の中、笑顔で『ここは楽園です』という回答を返す。監視員の二人は、本国タイタンでの生活や人間関係を思い出してホームシックにかかったりストレスが強まらないように、事前に監視員として赴任する前のすべての記憶を消去されており、帰国してから記憶を回復される措置が取られる。
男性の監視員は、最先端の飛行船に乗って地球をパトロールし、女性の監視員は、コンピューターによって完全管理された地上1000メートルの高さにある管制塔(ベース)でそのパトロール活動をアシストするという役割分担が決まっている。陽気でユーモアがありいつも前向きにパトロール任務をこなすジャック・ハーパー(トム・クルーズ)と温和で情報処理能力に優れ献身的にジャックを支援するヴィクトリア(アンドレア・ライズボロー)が監視員として派遣されている。
地球は人類が居住可能な星としての環境特性の多くを失ったが、海水を常時引き上げて核融合発電を行う超巨大エネルギープラントとして稼働するようになっており、テラフォーミングした人類の拠点の星へとエネルギーを送れる技術の開発が行われた。超巨大エネルギープラントは、人類存続の生命線の一つとされ、その保守点検とスカブによる破壊工作からの防衛が、二名の監視員の中心的任務である。
スカブに対する防衛・破壊の実務は、全自動で地球を回って監視している『球体の戦闘機械』が担っており、対象を認識して『人間(データベースに登録されている監視員)』であれば攻撃をやめるが、スカブや登録されていない生物であれば即座にマシンガンを発射して殲滅するようになっている。
この球体の戦闘機械のバッテリー交換も、ジャック・ハーパーの仕事の一環だが、機械と向き合う瞬間は『監視員は撃たれないように設定されている』と知っていても緊張を伴う。戦闘機械は高性能なマシーンではあるが、自動で地球をパトロールして敵を発見すれば破壊するだけの存在であり、『個体認識のエラー』が起これば人間でも射殺される恐れがある。
ジャックは毎晩のように懐かしく温かい気持ちになる夢を見ていて、過去の記憶をすべて消されているはずなのに、郷愁めいた感情が溢れてくる。そして、地球に残された自然豊かなスペースを発見し、相棒のヴィクトリアには内緒でそこに寄り道してくつろぐのが最高の楽しみになっている。朽ちかけた山小屋の近くには綺麗な泉が湧いており、緑が豊かに茂っているのだが、そこで人類が暮らしていた頃の地球を夢想しながら、ハイキング気分で横になるのがジャックの定番の息抜きになっているのだ。
ある日、夢に出てくる女性と瓜二つの女性が、宇宙船の脱出カプセルに乗って地球に墜落してくるのだが、『人間』には絶対に銃口を向けないようにプログラミングされているはずの機械が、その女性に対して突如発砲し始める。ジャック・ハーパーは必死にそのジュリア・ルサコヴァ(オルガ・キュリレンコ)という女性を助けるのだが、ルサコヴァ救助によって地球とタイタンを巡る秘密を明らかにするとっかかりが生まれる。
しかし、パートナーのヴィクトリアは『後二週間で監視任務が終わってタイタンに帰れること』のほうを楽しみにしており、危険な真実に迫るようなルール違反の活動にはあまり協力したがらない。失われていた記憶を少しずつ取り戻すジャックは、真実を知りたいという衝動を抑えられなくなっていき、少しずつ『作られた歴史物語の裏側』としての真実に近づいていくのだが、SF映画のネタとしては想定しやすい謎解きであり、主人公が受けるショックもパターン化されているものという感じは強いかもしれない。
ストーリーとも絡むが、スカブと呼ばれるエイリアンよりも全自動で動く戦闘機械との戦いの描写に力点があり、『荒廃した地球』における近未来的な超高層の管制タワーや変わった形をした個人用の飛行機、監視員制度とそのライフスタイルなどが映像面では見所になっている。伏線として散りばめられた謎の回収を新規性を感じられるものに工夫すれば、更に魅力的なSF映画になっていたと思うが、俳優のキャスティングと演技は役柄に合っていて良かった。