参院選の選挙運動は衆院選と比較すると格段に静かであり、住宅街まで選挙カーが頻繁に回って大声で候補者名を連呼するようなことも少ない。
政党支持による固定票・組織票はほとんど動かないので、日本の選挙運動は『候補者名・政党名の連呼による刷り込み』と『対立候補(政党)が政権を取った場合の危険性・負担増加の訴え』に尽力することになるのだが、演説を聞いてみてその人に投票してみようという変化を起こしてくれる有権者層もやはり一定の割合でいるのだろう。
『政治・政党のことは良く分からない』や『党利や私欲に走らずにとにかく国民の生活が良くなる政治をして貰いたい』という無党派層・(選挙時以外の政治に対する)無関心層に対しては、たまたま聞いてみた街頭演説の効果はゼロではないのだろう。
しかし一般的には、初めからある程度支持している政党や候補者の演説を意識的に聞いて、『自分の支持する感情・基準の再確認』をしている層のほうが多いだろうから、『初めから支持していない政党・候補者』の演説を聞いてみて投票先を変えるという有権者は相当に少ない気もする。
鈴木寛元文部科学副大臣が参院選の街頭演説中に、女に顔面を殴られたということだが、これは民主党やその候補者を狙った『政治的意図のある演説妨害・暴力行為』というよりは、ただ元々『選挙時の大声での演説・連呼・人ごみ』などを嫌っていた人(利用駅の近くで演説をするなと思っていた人)で、猛暑の影響でピリピリしていることもあって『うるさいと思う気持ち』を抑制できなくなった可能性のほうが高いように思う。
あるいは殴った女性の実名報道が控えられていることから、精神疾患やストレス反応、猛暑の生理的ストレスなどで判断能力が低下していたのかもしれないが、『政治・政策・制度設計に興味がある人』と『政治家・演説内容に興味がある人』とはまた違うので、政治に興味があっても大声・連呼の選挙演説は迷惑だと感じている人もいないわけではないかもしれない。
個人的には、政治家の演説を積極的に聞きたいと思う気持ちになったことは少ないのだが、時に、街の所々に『安倍首相来る・海江田代表来る・橋下徹代表来る』といった看板・張り紙があって、それによって人手が大きく増えるように、地位・影響力・知名度のある政治家であればその演説を生で聞きたいというちょっとミーハーな人(ただ一緒に写真を撮りたいだけの人なども含め)も結構多いのが実情ではある。
以前、安倍晋三氏の影響力が強い保守王国である山口県萩市に旅行に行った時にも、結構、料理屋の壁に安倍氏と店主のツーショットの写真などが飾ってあったりもして、そういった『触れ合える距離での地元での交流=小沢氏のいう手を握り合ったり直接質問に応えたりのドブ板選挙』というのも支持層の強化には効果があるように思うし、選挙活動そのものも静かにしていて大声・連呼を出さないと『やる気・存在感がない候補者』のようにみなされやすいリスクはありそうだ。