消費税が5%から8%に増税されることによって、商品やサービスの消費はある程度落ち込むと予測されているが、『住宅・自動車・ブランド品・貴金属』などの高額商品は特に駆け込み需要の後の落ち込みが心配される。
絶対に買わなければならない食品・雑貨・衣料品などの生活必需品については、消費の落ち込みは限定的かもしれないが、缶ジュースが100円から120円に値上げされたのが今では当たり前になっているように、『税込価格のベースライン』が抵抗を受けながらも引き上げられて定着していくという流れが生まれるだろう。
アイスなども昔は50円商品が沢山あったが、消費税導入後にいつの間にか100円商品がベースラインになってしまったし、10円だったチロルチョコも20円となり10円で購入できる駄菓子類は殆ど無くなってしまった。車の新車価格にしても15年くらい前までは、トヨタの最高級車のセルシオでも500~700万円くらいだったが、現在のレクサスブランドのLSでは1000万円前後の価格設定になっており、輸入車も含めいつの間にか高級車全体の平均価格は上昇傾向にある。
『消費税還元セール・消費税はいただきません』というセールストークでどれだけ売上が上がるのかは分からないが、『税込価格の表示(総額表示)』をするのであれば、単純に安ければ安いほど売れるので『消費税を取っているかいないか』はそれほど重要ではなくなる気もする。特に、『価格.com』などで複数の電子ショップの価格を客観的に比較できるインターネットでは、『消費税還元セールス』などの文句そのものは効果を持たないだろう。
最終的に、消費税を消費者が負担しているということを明確にしなければならないというが、『消費税部分の下請け(系列の下流・生産者)への転嫁』をゼロにすることは難しく、『生産・運輸・卸売・小売(販売)・消費者の物流プロセス』のどこが最も大きな負担をするのかは特定しづらい。
『税込の総額表示』に慣れてきているので、『3%』の消費税の値上げははじめは『税負担の大きさ』があるとしても、段階的に『物価上昇(インフレ率)』として受け入れられていくことになりそうだ。数年後には現在の『5%』と同じく、改めて消費税を払っているという意味での負担感は弱まると思われるが、このまま可処分所得が伸びなければ(雇用格差が縮小しなければ)、『消費税の負担感』よりも『物価の高さ』に困る層は増えるかもしれない。
消費税が概ね20%以上にもなる北欧諸国では、消費税の高さに対する不満はほとんど聞かれないが、スウェーデンにせよフィンランドにせよ、『高齢者福祉・無償教育・無償医療・雇用(失業保険)の質の高さ=可処分所得が小さくても社会生活・老後生活に必要な資源のほとんどが無料化されていて自己責任が問われる領域が小さい)』が背景にあるので、重税に対する国民の納得感が高いという違いが大きい。
北欧の福祉国家も財政規律の崩れからその持続性が疑われ始めてはいるが、日本の場合には『税金は段階的に上がっているのに社会福祉水準は据え置かれている』という不満感はやはり大きい。
教育(進学塾による補完が当たり前の公教育)にしても医療(国民健康保険の負担率の高さ)にしても、公的年金(若年層の負担に対する給付が小さすぎる)にしても社会インフラ(高速道路の建設費償還・メンテナンス費確保がいつまでも終わらず永遠に高額な有料が続きそう)にしても、消費税が増税されても『国民の実際の負担率』は全く軽減されないのだから、税金ばかりが上がってただ生活が苦しくなるというイメージしか持てない。