鷹ノ巣山(一の岳・二の岳・三の岳)の登山

夏バテしそうなうだるような暑さが続くが、暑気払いと体力増強を兼ねて英彦山の東隣に三つの小高い丘のような山頂を並べる『鷹ノ巣山(979.3メートル)』に登ってきた。鷹ノ巣山は少し離れた場所から山頂の連なりを眺めて楽しまれることのほうが多い山で、溶岩台地が削られて出来た独特の形状が面白いのだが、山中に入ってしまうと鬱蒼とした森林が多いので山の全体は殆ど見渡せず、頂上まで登っても木が邪魔して景観は余り良くない。

ワインディングを楽しむライダーが多い豊前坊の高住神社から歩き始めて、右側にある薬師林道から登山道に入っていく。薬師林道の左側に、小さな木橋のかかった鷹ノ巣山の登山道の入口がある。

この入口の標識は小さくて消えかかっているのだが、鷹ノ巣山は全般的にきちんとした分かりやすい標識が立っていない山で、『小さな分岐点の手書きの簡易表示』を飯塚市の有志の登山会が立ててくれているだけのようだ。

特に、『岩場を避けられる巻き道・近道(安全な復路・エスケープルート)』を指示する看板が老朽化して殆ど読めなくなっていること、森林に囲まれた森なので少しでも日が陰ると途端に薄暗くなりテープも見づらくなることに十分な注意が必要である。

いわゆる整備された一本道の登山道は途中でなくなり、どちらの方向にも進めるような踏み跡の乏しい森の中の道が続く(基本的には一の岳からの進行方向に対して左側上部に二の岳・三の岳が聳えているイメージを持つと良い)が、この山中の道は通常の地図やガイドブックでは詳細な分岐などが記されていないので、実際に歩いてみないと分からない。

一の岳の先にある痩せ尾根以降の木々が生い茂った山道は、初めて入った人は『道迷い』のリスクがあるので、慎重に赤テープを追いながら歩く必要があるがそのテープ自体も古くなってきている(赤テープを持参して分かりやすい進路に貼っていくと良いのだがいつも忘れてしまう)。進行方向の右下(南側)に下らずに左上(北側)の稜線や岩壁を意識して歩きたい。

私も一回、一の岳の先で道を間違えてしまって、やたら歩きにくい道(恐らく先行者が殆ど歩いていない岩と木の多い道)に押し入り、二の岳よりも先に三の岳の基部に行ってしまった。もう一つのミスは、三の岳の基部でザックを持ったままだと岩登りがきついので少し離れた大きな岩の横にデポしたのだが、帰りに日が陰ってきて見事にザックを置いた場所がわからなくなってしまったこと。

目印とした大きめの岩も似たような岩が多く、斜面をいったんだいぶ下ってみてから登ってきたと思われる道をもう一度歩き直して、やっと見つかった(財布だけは持っていっていたがスマホ・飲料などその他のものはザックに入れていたので焦った)。

自分が思っていたよりもだいぶ手前にザックを置いていたようで(決まった道はないが意識的に90度近いまっすぐのルートで登ったので見つけやすかった)、明るさの弱い森林の中での『正確な位置の感覚』はかなり曖昧になりやすい。確実な一本道の線上(岩壁の直下など)以外でザックを置くことのリスクを再認させられたが、猛暑ときつさで楽をしようとして横着をした(笑)

岩場を登るような山はザックの重量が煩わしく感じるが、夏場は最低2リッター以上は水分を持っていかなければならないので(鷹ノ巣山は水場なし)、それ以外の非常用のモノ(ツェルトなど重さのあるもの)をできるだけ削ったほうが登りやすい。

鷹ノ巣山のガイドマップや概念図では『一の岳→二の岳→三の岳』と順番に一直線に登っていくかのように書かれているのだが、実際は『二の岳』と『三の岳』の分岐点があって(その看板も非常に小さな手書きのもので見落としやすい)、そこで二の岳と三の岳のどちらにでも行けるようになっている。一の岳の頂上からの尾根を抜けた辺りの分岐で、斜面をやや左上に上がっていく道を取れば(右下方向の歩きやすそうに見える道にもテープがあるがこちらは先が結構険しくなって三の岳の岩壁に向かう道になる)、二の岳と三の岳の分岐になる。

荒れた分かりにくい登山道(歩きにくい細い尾根道)と頂上付近の険しい岩場が嫌われて、英彦山(中岳・北岳・南岳)と比べると圧倒的に登山者が少ないが、ロープや鎖、三点確保で岩を登るのが好きな人にとっては福岡県内では有数の山になっている。

ゆっくり足場を決めて登ればそれほど危険ではないが、英彦山の北岳の麓にある『望雲台(切り立った崖の上にある自然の展望台)』の鎖場を登れるくらいの高度への慣れは必要で、岩場を巻いてから取り付く『三の岳』の頂上への長めの岩登りは三点確保で少しずつ登ったほうが良い。

痩せた細い尾根(左右に滑り落ちやすい狭い道)が多いので走るような歩き方はやめておいたほうが良い。雨の日だったら無事に行って帰れる自信がないような道なので(岩場だけでなく傾斜が強くて普通の姿勢で歩けない土の道が多いので濡れると相当滑る)、天候の崩れが予想される場合の入山は見合わせたいところ。

歩行時間そのものはスムーズに行けば、三の岳まで登っても4時間ちょっと見ておけば十分だが、三の岳頂上は登りの険しさに対してシャクナゲの群生で景色が殆ど見えないのが残念だ。鷹ノ巣山は頂上からの眺めではなく、『尾根歩き・岩登り』を楽しむ山という感想を強く受けたが、所々にある細い尾根は風の通りが良くて、標高1000メートル未満でも暑さを和らげる冷たい風が気持ちよく吹き続けていた。

下山後は豊前坊からキャンプ場まで石造りの修験の遊歩道を歩いたが、この道は避暑客・観光客が多い道でもあり、椅子を出して読書をしたり昼寝たりしている人をちらほらと見かけた。帰りがけに『英彦山ホテル和(なごみ)』で、含放射能‐ナトリウム泉のまったりとした泉質の温泉に浸かってきたが、英彦山を一望できる新しくて綺麗な露天風呂が貸切状態でのんびり使えて良かった。『英彦山温泉』は泉質は少しぬめりがあって肌触りが柔らかい感じのお湯なのだが、湯上がりにべたつくことはなく“保湿感”と“さっぱり感”の両方があって良い。