皆子山(971.5メートル)でボーイスカウト13人が遭難・無事下山。子供を引率する登山では『遭難しない登山』に万全を。

結果的に、全員無事に皆子山から下山できたようで良かったが、こういった何とか下山できたケースであっても、『下山予定時刻の超過・関係者による遭難したのではないかの心配と当局への通報(捜索救助要請)』があった時点で『遭難』と見なされることになる。

大人の単独行・少人数の入山であれば、道に迷ったり天候悪化に遭ったり怪我をしたりしたことを理由とする『予定時刻を超過した真夜中・翌朝の下山』は他人に生命の危機を知られていないという意味で統計に加算される『遭難』ではないが、『実質的な遭難(ほぼ遭難に近い事態)のリスクを踏んだ登山』としての自省は求められるだろう。

皆子山:遭難情報で捜索の小5ら13人 全員が無事下山

登山は人と一緒に登るのは楽しいけれど怖いものでもあり、特に“初心者・子供”となると、安全登山で時間通りに確実に下山できるように計画するためには、『山の難易度・季節・天気・行動時間・装備』を十分に検討しなければならない。

それでも12月の冬山の季節に、1000メートル未満の低山とはいえ、大勢の小学生の子供を引率して登るというのは、『時間・体力体調・天気を考慮した上での引き返す基準』を明確な集団のルールとして決めてすぐに実行できるようにしておかなければ一定のリスクがある。

大人数であればあるほど、道に迷ったり誰か一人が大きく体調を崩した場合には判断が難しくなり、一人の回復(ケア)や励ましにあたっている間に日が暮れてしまい、集団全体での進退が極まった事例は過去にも幾つかある。『誰かがもう歩けないレベルの怪我・病気・体調悪化をしたケース』での行動原則(誰が現場を即座に離れて救援要請するかなど)は事前に決めておかないと、冬の日没の早さはパニックになってしまえばあっという間である。

子供を連れて登るのであれば、何度か登ったことのある山でも一~二週間以内に『登山道の下見(登山道の状況確認や積雪の有無・絶対に迷わないと思えるだけのコース確認・強風や降雨を避けたりエスケープできるポイントの設定・分かりにくい箇所の赤テープの目印の補強など)』をしっかりとして、下山予定時間よりもある程度早めに下山できる体制を固めておかなければならないと思う。

冬山に登らないという以外で、まず間違いのない安全策を取るのであれば、『自動車道が登山道と概ね並行して頂上やその近くにまでつながっているような低山(車でも頂上やその近くまで登れる山)』をセレクトして、風が強くなったり誰かが体調を崩したり怪我をした時には、舗装された自動車道に短時間でエスケープできるようにしておくこと(可能であれば頂上近くの駐車場に非常対応の車を止めておくこと)だろう。

そんな開発され過ぎた山では、トレーニングや野外生活の実習にならないというボーイスカウト側の言い分もあるだろうが、道迷い・怪我・病気などでいざという時に『冬山の中で一晩を過ごさなければならない山深さのある山(下界・舗装路までのアクセスが長く道も分かりにくい山)』は、今の季節だと西日本の低山でも零下の冷え込みになって大人でも耐えきることが難しそうだ。

ダウンジャケットやシェルの防寒具があっても、夜の冬山で一晩過ごすには不十分であり、雪がほとんどない低い山では雪洞なども掘れない。谷の窪地に避難するか、森林の樹木を風避けにして仲間同士で集まってひたすら寒さを我慢するしかなく、強風や雨があれば弱ってくる子供が出てくるだろう。

1000メートル級の山でも、冬場の頂上は昼間でも強風が吹き荒れて寒いことが多く、大半の登山者は長居できずに早々に立ち去るのだから、山小屋・テントなど外気を遮断できる環境がない限り、ある程度着込んでいても低体温症になることは不可避である。

しかし日帰り登山でテントを携行する人はまずいないし、2キロ程度の軽量化されたテント(値段も高額で大半の日帰り登山者は初めから購入していないだろう)でも子供がずっと背負って登るには重すぎて逆に危険である。責任者がツェルトを携行するにしても全員が入れるはずもなく、基本は経験・下見で日帰りできることが確信された山(何かあれば短時間で撤退できるルートがある山)にしか子供と一緒には入れないということである。

京都府最高峰とされる『皆子山』について全く知らなかったが、毎日新聞の説明には以下のようにあり、誰もが気軽に無理なく登れるほどの低山ではないようである。

一定の登山経験があるボーイスカウトの子たちの実地訓練を兼ねているとしても、このレベルや道が荒れた状態の山に子供と登るのであれば10月くらいまでを限度とすべきなのかもしれない。アイゼンやスノーシュー(かんじき)、ピッケルなどの道具を必要とする冬山は、(山麓で練習したり山の周辺で遊んだりするのを除いて)それなりに危険があるので、凍結・深雪があるような山中には子供は連れていかないほうがいいだろう。

大学が設営した山小屋があると書かれているので、非常時に一般登山者にも開放してくれている無人の山小屋(鍵がかかっていない小屋)なのであれば、いざという時には山小屋に避難することができる可能性もあるが。

>>皆子山は京都府内最高峰として登山愛好家に人気がある。地元の山岳関係者によると、主な登山ルートは三つあり、いずれも谷筋や岩場が続き、難易度の高いことで知られている。皆子山に山小屋を持つ京都工芸繊維大ワンダーフォーゲル部の佐藤智之部長(21)によると、この時期は積雪していることが多く、足を取られないためかんじきが必要という。「台風の影響で倒木や岩があったり道が崩れたりしている場所もある。小学生には難しい」と話した。