生活保護受給世帯が17年ぶりに減少。『若年失業者・低所得層・低年金無年金の高齢者の増加』による生活保護増加も懸念される。

約160万世帯の母数に対して前月比368世帯の減少というのは統計的な誤差の範囲だが、非正規・バイトの求人は増加している。金融緩和・公共投資を中心としたアベノミクスの雇用改善効果は限定的だろう。

生活保護受給、17年ぶり減 2月、前月比368世帯

欧米諸国ではキャリア・スキルの乏しい若年層の雇用市場が縮小して失業率が20~30%を超えている国も多く、生活保護・職業訓練(就労支援)の予算も増えているが、市場が成熟して単純労働の労賃が下落すると『若年層の雇用問題』が深刻化して社会福祉費が増えるというのは資本主義国家の歴史的な構造問題でもある。

グローバリズム(生産の海外移転)と市場の成熟化、高スキル人材(教育期間の長期化)の需要増がもたらすのは、『働く意欲と健康な身体さえあればある程度稼げる仕事ができる』という旧来の労働観(常識)の崩れであり、生活保護者が徒手空拳で仕事を得てもその給料だけで自立できる給料を稼ぎにくくなった。

グローバリズムや競争原理激化で一定以上の負担がある仕事をしてもそんなに多くの賃金を稼げない人が増え、『労働所得と生活保護給付の格差』が縮減した事で、労働者の生活保護に対する不公正感・不満感が強まっている。

生活保護は『庶民の感情的・道徳的な分断工作』にもなりやすいが、これからの先進国の経済では『働けば豊かになれる中流階層の再建』は困難で、最低限の生活のためだけに働く意識に陥りやすい生活保護層の社会復帰・再就労をどう促進していくのかは難題だ。

健康面では働ける状態の生活保護者の職業訓練・再就労もあるが、団塊世代の年金受給で低年金・無年金の高齢者問題も露見する。

先進国でもGDPの全体のパイは現状維持で推移しているが、『ポジション・成果・雇用形態に応じた財の配分』で格差は開く。生活苦のワーキングプア層や就労を諦めがちなニート・高齢者層、そこからの生活保護への移行といった問題を抑制するためのモチベーションを高められる仕組みが必要か。