食事と健康(肥満・生活習慣病のリスク)の相関をどう考えるか:ジャンクフード・炭酸飲料は不健康な食事とされるけれど…

健康な食事といえば『野菜・果物の割合が多くて栄養バランスの取れた食事(味付けの薄いメニュー)』がイメージされ、不健康な食事といえば『炭水化物・脂質の多いジャンクフードやインスタント食品、スナック菓子、清涼飲料水(味付けの濃いメニュー)』がイメージされるが、ここには食の健康にまつわる一つの錯誤も生じやすい。

野菜・果物をたっぷりと摂取する健康的な食事であれば『一度に食べる量・一日に食べる頻度(回数)』が相当に多くても構わないという錯誤である。一回の食事に山ほどの沢山のメニューをお膳に並べ、丼茶碗に山盛りのご飯を何杯もお代わりしても『不健康な食事』でないのだから健康には悪くないというような考え方をしていれば、いくら葉物・緑黄色野菜・根菜・果物をたっぷりと摂取して肉・魚料理を合わせて食べても、カロリーオーバーで肥満になったり長期的には健康を崩しやすくなる。

不健康な食品には課税必要、「たばこより危険」=国連報告官

先進国の食生活では少なめに食べていても『必須栄養素の不足』は起こりにくいが、腹いっぱいになるまで食べるのを常としていれば『必須栄養素の過剰』は極めて簡単に起こるので、栄養バランスの摂れた手料理でも品数や分量が多すぎれば肥満・生活習慣病の原因となる。

どんなに健康に配慮されたメニューでも、常に毎回腹がパンパンになるまで食べると、一日10キロ以上のランニングを習慣化していても、中年期に入ると太る傾向が生じる。反対に、『不健康とされる食事』の割合が多くても摂取量と頻度が少なければ(運動習慣が確立されていて時に野菜なども摂取していれば)、よほど同じジャンクフードばかりを食べたり偏った糖分・栄養素などを大量摂取しない限りは健康への有害性は限定的だろう。

コーラやサイダーなどの炭酸飲料は糖分が多くて健康に悪いものとされる代表格だが、小さなコップ1杯程度の分量で済ませて他の食事量が少なく、運動量も十分であれば有害な食品としての影響は限定的だ。反対に、砂糖入りの紅茶や牛乳などでも何回も大量に飲んでいて、ずっと動かずに室内だけで大半を過ごすような生活をしていれば、炭酸飲料と同等以上の糖分摂取の弊害が出る恐れが十分にある。

世界保健機関(WHO)総会で、国連のオリビエ・デシューター特別報告官(食料問題担当)が、不健康な食事はたばこより健康へのリスクが高いとして、課税するなど早急に対策を取るべきと提言したそうだが、最大の健康リスクは『生活習慣の乱れ・摂食量(特に糖分、塩分、脂質)の増加』 にあり、食べる食事の内容や種類も大切だがそれと同じように食べる食事の分量や頻度(間食の多さ)も健康への影響に関係している。

空腹を感じてから適量を食べる食習慣の確立、腹6~8分目で抑えておく節食の傾向があれば、『いつもジャンクフードと炭酸飲料・いつも塩分と糖分を大量摂取する・一切野菜も果物も食べず炭水化物と肉魚ばかり』とかでない限りは、食事のメニューと健康状態への影響度を神経質に心配する必要性は乏しいのではないだろうか。

そもそも、『適度な満腹感と緊張感・節食の傾向・身体感覚の充実』があれば、ジャンクフードやお菓子を食べるにしても自然に節度あるものとならざるを得ず、『節食・少食・粗食(ほどよい空腹感があり血糖値・脂肪値を定期的にきちんと下げていること)』が食生活と健康状態をつなぐための秘訣だというのは、仏教の禅宗の『典座教訓』などの食事作法からも推測されるものかもしれない。

健康に良いとされる栄養バランスの良い家庭料理を食べていても、その摂食量や間食・頻度の生活習慣や運動習慣との兼ね合いが大切であり、高血圧や脂肪異常症、糖尿病などの生活習慣病は、『健康的とされる食品』ばかりを食べていたからならないという類のものではない。

飢餓・栄養失調の問題が残る途上国は別として、飽食あるいは栄養過多(口淋しさの欲求の手軽な充足環境)の現代においては、『食べて栄養素を加えて健康になるという考え方』よりも『食べずに栄養素を調整して健康になるという考え方』のほうがむしろしっくりくる感じがある。