高円宮典子様と千家国麿さんの結婚は『古事記・日本書紀』の神話時代まで遡る血縁関係や国譲りが引き合いに出される事が予想される結婚だが、皇室と寺社は日本の家柄・格式・信仰の物語的な源泉である。
天皇・皇室・寺社格式・記紀の神話にまったく興味がない日本人も増えてはいるだろうが、それでも科学的世界観や世俗的価値観が普及した現代の日本において、『神々の血統の末裔としての家柄とその権威』が単純なフィクション(作り話)以上の共同幻想として未だに機能していることは驚嘆すべき事かもしれない。
天皇や皇族に『日本人らしさの純粋な模範的な原型(実際は明治維新以降に創られた伝統・格式・道徳・行事も多いが)』を見出したいとする日本国民は現在でも相当な割合に上り、庶民を畏敬させる貴種崇拝願望はなお強い。米を特別視する瑞穂の国の伝統も、天皇家の大嘗祭・新嘗祭の祭祀と切り離しては考えにくかったりする。
出雲大社に祭られている大国主神が率いる“国つ神”は、神話時代に高天原の天照大神が率いる“天つ神”に敗れて『国譲り』をするが、これはヤマト王権の出雲支配のメタファーとも言われる。出雲国の始点には高天原から追放されたスサノオノミコトがいて、大国主神はスサノオの子孫ともされるのでルーツは同根とも言えるが。
出雲大社(杵築大社)は『国譲り』の条件として建設され、敗者の怨念を鎮めるための『怨霊信仰』の起源ともされるが、古代の出雲大社は現在のものよりずっと巨大だった。平安時代に『雲太・和二・京三』と呼ばれ、東大寺大仏殿・平安京大極殿を超える日本一の高さを持つ建築物と評された。
史実性や技術的可能性はともかく、古代の出雲大社の高さは96mもあったとされる。高円宮家では典子様の姉の承子様の留学時の奔放な異性関係がスキャンダルとして報じられた事もあったが、現代のウェブ社会では皇族の私生活・素の姿が漏洩しやすく、その分だけ神聖権威・模範的な気品が損なわれやすいとは言えるかも。
現代における天皇・皇室は『国民の総意に基づく国民統合の象徴』とされるが、実質的には国民が形成される以前からの神聖権威(歴史的統治者)であり、『記紀の共同幻想・神話的権威』は超時代的な宗教のような機能も持つ。皇室の人権停止や天皇の終身性、皇位継承権(女性天皇)・宮家創設の問題など今後の論点も多いが。
高円宮典子様と千家国麿さんの結婚についてプロポーズの言葉や具体的な交際の質問が飛んでいたが、どちらにも具体的な答えは殆どなかった。自然な流れを強調されており、年齢差や実際に会った回数等から好きだ惚れたの自由恋愛の結果というより、『両家の家格・歴史・話し合い』から縁組への流れであろうと思われる。