リサイクル店経営の中尾伸也夫妻による『従業員・関係者の虐待殺人』は動機・目的の謎もあるが、閉鎖的な職場・擬似家族の環境で『暴力を用いた人格的・精神的な支配』が起こる事件は多く起こっている。
大掛かりなものではオウム真理教事件の、サティアンでの半監禁生活(行動の自由の禁止)と体罰・閉じ込めを伴う洗脳教育などが上げられるが、松永太死刑囚が配偶者の親族を多数殺害して財産を奪取した『北九州一家殺人事件』や角田美代子被告が主導して複数の家族を監禁・殺害した『尼崎事件』などもある。
リサイクル店の殺人事件は、『従業員を監禁・虐待して支配する+従業員の預金通帳から現金を下ろす』といった犯行形態のようだが、22歳のキャリアのない従業員ということで奪い取った現金の金額はそれほどの大金ではないだろう。金銭は副次的な目的でサディスティックな虐待・支配が先にあった事件かもしれない。
被告の夫婦が経営する店は儲かってはいなかっただろうが、閉鎖的職場で専制君主のような存在になり、住み込みで働かなければいけない事情もある気弱な従業員がくると、仕事上の関係を越えた人格的な支配・隷属の関係を築いたのか。反社会的パーソナリティの男女がくっつき同意・協力した上での残酷な事件ではある。