総合評価 75点/100点
桜庭一樹の『私の男』が原作だが、近親相姦的な色彩の濃さが個人的な趣味には合わない。小さな子供時代から自分の子として育てている女の子と、秘密の男女の関係を持つようになるというプロットが、セクシーなシーンをセクシーなシーンとして楽しみにくい難点でもある。
とりあえず、『背徳的なインセストタブーのつながり・社会道徳に違背する性愛』を、『ドロドロな性愛の背後にある究極の純粋な愛(誰にも理解されないが二人の間だけに確固としたものとしてある関係性・執着性)』にまで昇華させたい試みという風に解釈はできる。
だが、主役の腐野淳悟(浅野忠信)がただ不気味な感じが漂うロリコン趣味な中年男としか見えないような物語の単純な流れ、人物の背景描写に『共感性・人物の奥行きの限界』があるのではないか。
養子の子供に性的虐待をして、心理的・性的に洗脳した男というような描き方以上のものではないが、それでも淳悟が好きで離れたくないというある種の『ストックホルム症候群』に陥った花が、花を保護するために淳悟と引き離そうとする親戚のおじさんを殺害するという所が、『世間・道徳対二人だけの関係性』という図式の佳境ではあるだろう。
こういった物語の悲恋性を際立たせるのであれば、腐野花(二階堂ふみ)にしか理解できないとされる『腐野淳悟の孤独感・疎外感・コミュニケーション能力の困難』をもっと綿密に描いたほうが良いと思う。
実際、映画の初めの15分くらいは『奥尻島の南西沖地震の震災後の混乱と淳悟が花を引き取るまでの冗長な描写』なので、この部分に腐野淳悟の過去の重要なエピソードや人格構造の形成要因となった体験などを織り込んでいれば、もっと淳悟と花の関係の必然性がわかりやすかったのではないか。
二階堂ふみの健康的でグラマラスな下着姿や変態的でエロティックな濡れ場(R15指定なので極端にハードではない)が複数回あったり、花の恋人役の高良健吾が浅野忠信に上半身を挑発的に脱がされていって逃げ出すシュールなちょっと笑えるシーンもあったりと、映像面での刺激・面白さは少なからずあるが、タブーな恋愛・性愛とその背後にある人格的・エピソード的な履歴というものを描くにしては、『映像の表層的な興奮・印象』に頼りすぎた嫌いがあるかもしれない。