総合評価 78点/100点
前作『トランスフォーマー ダークサイドムーン』では、シカゴの都市でのディセプティコンとの大激戦が見所になっていた。このロストエイジはシカゴ決戦から3年後の世界が舞台になっている。
オプティマス・プライムをはじめとする“オートボット”は、地球を襲撃した悪の機械生命体“ディセプティコン”と同じ種族と見なされるようになった事から、人類とオートボットの関係は急速に悪化しつつあった。
反オートボット派の政治家やCIAは、KSIというロボット企業と癒着して『墓場の風』と呼ばれる戦闘部隊を派遣し、『オートボット狩り』の作戦を秘密裏に遂行している。墓場の風の猛烈な集団攻撃を受けて、オートボットは次々と捕獲され解体されていき、機械生命体の謎を解くためにその金属素材が採取され分析されている。
KSIはオートボットの金属素材からあらゆる物質に瞬時に形態を変えられる『万能金属』の合成に成功し、人工オートボットの製造に着手する。人工オートボットの生産体制を確立することによって、オプティマス・プライムら異星人のオートボットに地球防衛を依存しなくても良い独立的な安全保障を実現することを目指していた。
アメリカ政府の上層部には、人類とは明らかに異なる機械のような生命体であるオートボットを信用できない(いつか裏切られるのではないか)という『反オートボット派』の影響力が強まっていた。
今まで、基本的な価値観を共有する人類の盟友として、地球防衛の役割を果たしてきたオートボットを人類は裏切って破壊しはじめる。オートボット(異質な他者)との信頼と裏切り、無害なオートボットに人類の誰かが一方的に攻撃を仕掛けるというのは『トランスフォーマー』の主要なテーマの一つである。
まぁ、実際に外見や生命の歴史、生態が全く異なる対話可能な知的生命体と人類が遭遇した場合、恐らく人類は相手が無抵抗かつ協力的であっても(異星人の本心を読みきれないという疑心暗鬼に駆られて)先制攻撃や裏切りの作戦を仕掛ける可能性は相当に高いだろう。
『トランスフォーマー ロストエイジ』は、前作まで主人公だったサム・ウィトウィッキー(シャイア・ラブーフ)とその彼女という組み合わせが解消されており、シャイア・ラブーフやロージー・ハンティントン=ホワイトリーは全く出てこない。
ロストエイジの主役は、貧乏な発明家でシングルファザーのケイド・イェーガー(マーク・ウォールバーグ)と父親からの束縛を煩わしく思う娘のテッサ・イェーガー(ニコラ・ペルツ)、そして、娘テッサが父ケイドに秘密で付き合っていたプロレーサーの彼氏シェーン・ダイソン(ジャック・レイナー)である。
前作までと比較すると、学校で冴えないサム・ウィトウィッキーとエキセントリックな家族、クラスで人気のセクシーな彼女がコミカルに絡み合うような笑いの要素は大幅に縮減されている。
サムとサムの愛車(カマロ)になっていたバンブルビーとの個人的な友情みたいなものも出てこないのはちょっと物足りない。ケイド・イェーガーとオートボットたちの付き合いが浅すぎるので、オプティマスやバンブルビーとの味わいのある会話場面も少なめで、どちらかというと戦闘メインのシリアスなアクション映画になっている。
娘のテッサを溺愛する父親のケイドが主人公なのだが、テッサと付き合っているレーサーのシェーンを初めはライバル視しながらも、次第にその人間性や誠実さ・勇気を認めていき、ケイドとシェーンが協力して困難に立ち向かうという設定になっている。
最後の決戦となる戦闘場面では、オートボット狩りで仲間の多くが解体されてしまい、頭数が圧倒的に不足してしまったオプティマス・プライムらの『オートボット軍』は、野生のジャングルに静かに棲息しているダイナボットという恐竜型の高い戦闘力を持つ機械生命体を仲間に引き入れる。
エピローグでは、オートボットの機械生命体の起源が探求され、オプティマス・プライムは自分たちが自然発生的に誕生した生命ではない驚愕の事実を知る、オートボットは宇宙のどこかにいる『創造者(神)』によってデザインされ組み立てられた存在なのだという。
更にその『創造者(神)』は戦闘や争い、地球侵略を引き起こすための干渉をけし掛けた疑いが強く、平和や調和といったオートボットたちの価値観とは折り合わない『創造の意図』を持っていたと推測される。
自らを生み出したとされる創造者(神)が、なぜ争いや侵略を止めるのではなく引き起こそうとするのか(生命をわざと破壊しようとするのか)、納得できないオプティマス・プライムは『創造者の真意・考え』を問いただすため宇宙空間へと飛び出す。造物主のような神との邂逅、次回作への伏線が強く引かれたエンディングである。