百田尚樹『殉愛』を巡るさまざまな新証言と晩年に現れやすい妻・家族との絆の問題

百田尚樹は小説の作品には面白いものもあるが、安倍政権への思想的な異常接近やネット上での口汚い罵倒・反論などが明るみに出て、『人物としての癖・乱暴さ』の方が話題になりやすくなった感じがある……良くも悪くもキャラクターが強すぎるのかも。

百田尚樹氏の『殉愛』に続々新証言 たかじん氏が前妻に頼んだ「看取り」

『殉愛』はやしきたかじんの晩年を軸にしたドキュメンタリー(ノンフィクション)と銘打たれているが、『取材する範囲・取材内容の質』に甘さが多く、『百田尚樹が書きたい(売れる)と思った物語の設定・枠組み』に半ば強引にやしきたかじんとその周辺の関係者を配置していった作品のように思える。

殉愛とか純愛とかいうよりは、それまでお金と権力を振り回して『怖いものなし』とばかりに破天荒に生きてきたやしきたかじんが、思わぬところで『末期の食道がん』という死の病魔に襲われ、それまでの強気や豪快さが通用しない精神の極限状況に追い込まれただけのような。『一人で死ぬ恐怖』から手近な女性を求めた流れ。

記事のように、元妻に『俺を見捨てないでくれ・やっぱりお前しかいない』と粘って泣きついてみたが、結婚中は元妻・家庭を粗略にしていた落ち度もあり、元妻は既に再婚もしていたことから、遂に戻ってきてくれなかったという悲しい話。カネ・能力・権力に自惚れ他者を粗末にし、最後は孤独な高齢者は意外に多いが後の祭り。

山城新伍氏もDV・不倫で泣かせ続けた元妻・娘から完全な絶縁を宣告されて、娘に少しでも会いたいという願いも拒絶され、介護付き高級老人ホームで最期を迎えたが、この手の話は結構ある。健康・カネ・能力・追随者がある時は、調子に乗って身近な妻・子を大切にしないが、カネや地位を求めて自分を持ち上げていた取巻き等はあっさり消えるもの……。