STAP細胞や研究不正問題は小保方晴子氏一人だけのスタンドプレイとセルフブランディングではなく、グランドデザインを描いた笹井芳樹氏や理研の組織も関係していたと思うが……ヒロイックな天国から地獄への温度差が激し過ぎる。
小保方氏は「懲戒解雇相当」 理研、「STAP細胞」問題で処分発表
生命科学の研究分野に『カネ・名誉・国際競争・メディア』が過剰に絡みすぎている構造的腐敗の問題も指摘されるべきで、生命科学やロボット工学はじめカネになり得る科学分野が『自然事象の真理・法則・介入の探求』でなく『世俗的なカネ・地位・雇用・名誉・注目』をメインにして競争し合う異様な熱気を帯びた反動もある。
笹井芳樹氏にとっては『生命科学分野の国際競争で抜きん出て直近のセンター長ポスト獲得や予算増額の布石』、小保方晴子氏にとっては『科学者としてのキャリアや評価を固める為のメディア受けする演出』という点で利害が一致した可能性。『理論的に可能なSTAP現象』を盲信し実証実験を後回しにしたのは致命的ミスだった。
笹井芳樹氏や理研の関係者が、どの時点でSTAP現象捏造に気づいたのかは定かではないが、『上司・理研を喜ばせるための研究成果の捏造』に結果を焦った小保方氏が誘惑された可能性があるのだろう。理論的には可能なのだから、実証実験は今は無理でも近いうちに必ずできるという非科学的な態度と甘い見通しが感じられる。
しかし、いったん『STAP細胞の作成に成功』というニュースが飛び交うと、もうひっこみがつかなくなり、世界の研究者たちが再生医療の進歩につながる画期的成果を絶賛して次々と追試を開始してしまった。日本ではリケジョ・女子力で小保方さんに注目が集まり笹井氏の広報戦略は奏功したが、後になって自分の首を絞めた…
結局、一流の科学者としての王道を歩んだ笹井氏やその周辺が、何らかの価値観や学術的態度の変化によって『科学的真理の探求・検証』という本題から逸れて、『人物本位・メディア戦略のマーケティング』をしかけて、勉強だけではない女性研究者のイメージ優先で、研究成果をテレビ向けに売ろうとしたのが失脚の始点だったのかもしれないと思う。