お金の授業がないのは日本の学校教育は原則として組織に適応するサラリーマン育成の規律訓練機関だから。1980年代まで会社・役所に所属すれば『税・社会保障・金融・保険』について何も知らなくても総務が代理で事務処理をして経済問題を回避できた。
学校の先生はお金の稼ぎ方や金銭トラブルについては素人であり、毎日仕事をして無茶をしなければ『お金の問題が生じない環境』にいるので、お金について勤勉・節約以上の事を学ぶ動機づけは乏しい。基本的に『どこに就職するか(やめずに在籍し続けるか)がお金の問題のαでありΩ』というのが今までの日本人の常識である。
勤めている会社が倒産して給料が入らなくなったら(メンタルを壊して仕事をやめたら)どうするのリスクは、1991年前後のバブル崩壊で大企業・銀行が倒産するまでは『無視されるリスク』だった。一定の大きな組織に所属さえしていれば『経済的な終身保障』がある認識はそれまで強固で初期のリストラは自殺者を出した。
お金の授業で必要なのは就職・学習する以外には誰も正解の分からない『お金の稼ぎ方』ではない。成人後に支払い義務が生じる『税・社会保障』、『借金の利息と返済方法のリスク・クレカの使い方』、貯金以外の『投資・民間保険』、お金に困って追い詰められた時の『各種免除申請・生活保護・NPO等の知識』である。
FP3級レベルの金融・経済・人生設計にまつわる知識を大雑把に学べるような授業があれば有益な部分は大きいし、そこに『働き方・職種の選択肢と就業するまでの具体的プロセス』を学べるキャリア教育を盛り込んでも良い。ローンを組んだり借金をしたら金利の高低でどれくらい負債総額が増えるかさえ知らない人も多い。
世の中には色々な職業・働き方・立場があるが、学校教育ではどこかの企業・団体に就職するか専門資格を取るか、公務員採用試験を受けるかくらいの選択肢しか普通は提示してくれないし、意外に『この仕事にはどういった具体的プロセスで就けるのか・この仕事はどんな収益構造を持つか』は大人でも良く分からない部分が多い。