結婚の不安としての『お金の問題』と現代における未婚化・晩婚化の原因となるもの

“相互扶助・子孫継続(現状維持・再生産)”の手段だった定常型社会の結婚が、近代化で“幸福実現・男女の魅力(上昇)”を目指す成長型社会にシフト、成長停滞・選り好み・宗教消滅で結婚も停滞した。

<結婚の不安>「お金」4割 未婚の一因、 英仏は「相性」 (毎日新聞 – 05月24日 12:16)

結婚の不安としてのお金の問題はやはり大きいのだろう。だが、非正規雇用でも結婚の優先度を上げて相手への要求を落とし、趣味・遊びを捨てて仕事を2~3個掛け持ちすれば、30万程度は稼げるので結婚生活自体は維持できるだろうが、そこまで苦労してでも結婚したい人が減ってしまっている。

逆説的に、非正規・短時労働では職場の婚姻圧力が弱く、周囲の婚姻率・保守的な人生設計率が高い大手ほど結婚を目的化しなくなることも多い。

朝日新聞で『正規雇用のメリット・デメリット』の特集が組まれているが、フルタイムで残業も多い正規雇用のキャリアに20代前半からがっちりコミットした人は、いずれにしても仕事外の時間は少なく将来路線も確定的なので、結婚した方が精神的安定や経済的な人生設計のメリットが大きく選択も迷わない。

正規職・結婚などを『自由の制限・不安』と捉えるか『将来の保証・安心』と捉えるかはコインの裏表だが、先進国における晩婚化・未婚化は今身動きがとれなくなる(それ以外できなくなる)選択を先延ばしにする『モラトリアム』と関係しているだろう。これ以上の延期は不利益が大きいと判断すれば、男女共に焦るがそこからだと間に合わないリスク(晩婚化による不妊治療数の増加など)も当然ある。

かつての昭和期以前の皆婚時代は、多くにとって結婚はロマンティックな結婚生活や官能的な色恋を夢想する類ではなく、長期的に稼げる職場がない女性にとってはいずれ絶対にしなければならない生活手段でもあったから、晩婚化未婚化は自分の将来リスクの増大になるだけなので、早めの結婚の決断に迷いも生じにくかった。

しかし現代でも、若年層の一部では将来に選択を先送りしても得られるメリット(今の相手でも別の相手でも結果)は変わらず、将来不安が余計に高まるとの旧来の見方がでて、リア充タイプの早婚化(学生時代に付き合っている相手と早めの結婚)も増えてきたという見方もある。結婚率・出生率も落ち着くべき所に落ち着く。

結婚してからもお金の問題・話題は、興味関心の中心には有り続けるし、失業や所得減少は家庭生活の継続困難や離婚にも成り得るから、『愛情・努力さえあれば万事OK』とも言えない。『仕事・所得の安定性』は家庭の平和・安心と無関係にはならず、子供の教育・人生の支援や老後設計も含めると難問は多い。

宗教消滅というのは、厳密には『祖先崇拝・先祖祭祀の消滅』であり、『家名・遺骨・位牌・お墓』などを何が何でも子孫をつないで守っていかなければご先祖様に面目が立たないといったようなイエ・祖先と絡んだ宗教的感情のことである。

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