トランプ大統領の性格気質についての雑感と入国禁止令に対する司法の否定的判決

○中東・アフリカ7国の入国禁止のトランプ大統領令は、違憲の疑いもあり不当としてシアトル連邦地裁のロバート判事が即時停止を命じた。判決は大統領令に優越するので、国務省はしぶしぶ有効なビザを所持していれば7ヶ国の人も米国行き旅客機に搭乗し入国できるとした。トランプは納得せず司法省に執行停止の控訴をさせる。

アメリカの大統領の権力と、州政府の自治権と、司法の権力(憲法審査権)と、議会の反論の議論が激しくぶつかり合っている。ビザがあるのに入国禁止は不当と、シアトル地裁の大統領令停止の判決が即座に全米に適用されたことは、『米国に三権分立の法の支配がある・トランプは全権掌握の独裁者ではない』を立証している。

トランプ大統領は、シアトル地裁のロバート判事の大統領に逆らう判決を『アメリカの法治を脅かす』と非難するが、大統領令が誰にも覆せない絶対的命令ならそのほうが法治・民主主義ではないということになる。確かに合衆国大統領は米国の最高権力者だが、その大統領もまた法の支配の下にあるからこそ独裁者ではないのだ。

○リーマンショックとサブプライムローン破綻の反省から、過度のリスク投資を規制する意図のドッド・フランク法を廃止…本心はウォール街の味方なのだろうか。

トランプ氏、金融規制を緩和へ オバマ氏の「遺産」覆す

今アメリカ経済は中期の景気サイクルで好況に向かいつつあり、ダウなどの平均株価だけではなく、雇用統計も予想を超える改善を続けている。金融規制緩和のニュースで月曜は日経平均も刺激されるか。格差を嘆く富豪のトランプ大統領だがウォール街のゴールドマン・サックス等とつながってそうと思われても仕方ない金融政策路線ではある。

○トランプはワンマン企業の頑固親父みたいなもので、自分に寄ってきて愛想良い相手にはそれまでの敵意や暴言を簡単に引っ込める『八方美人外交』である。

トランプ氏「首相との友情に感謝」 日米首脳会談会見

トランプ大統領をアメリカの英雄や民主主義の模範のように持ち上げる日本の安倍首相をトランプは気の合う友人とし、米国との新たな戦略的互恵関係で丁重に接してきた中国の習近平には話の分かる奴だと『一つの中国』の前提を今まで通り認めるとし、独裁的な憧れのリーダーであるロシアのプーチンには経済制裁解除に動く。

あいつらはテロリスト予備軍だといわんばかりに敵視している入国制限の中東7か国だって、向こうの首脳から『偉大なアメリカ』に朝貢するへりくだった態度でどうか入国させてもらえませんかと懇願すれば、気を良くしたトランプ大統領が『あの国は意外にまともな奴がリーダーをしているから大丈夫』とかいって認めかねない……。

トランプは分断と対立を煽る攻撃的な政治家ではあるが、本質は自分を立ててへりくだって丁重に接してくる相手を冷淡に拒絶する合理主義というか政策の一貫性に弱い情緒主義にも見える。トランプの世界観なら米ロ中日は『強力なパートナーシップ』で結ばれていて、あたかも今までの歴史・人権・領土の問題を無視している。

一方で、自分にすり寄ってこずにリベラルな正論や人権で批判ばかりしてくる、かつての普遍的な価値観外交のパートナーであるヨーロッパのEUはあまり好きじゃないみたいである。米国と価値観が合わないはずのロシアのプーチンを尊敬する先輩のように持ち上げ、フランスのオランドやドイツのメルケルより好きみたいだ。

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