野生動植物の輸出入を禁ずるワシントン条約が決定打となり、珍しい動物を見たいニーズを優先して運営できた時代は終わった。動物園・水族館は『施設・自国に今いない動物種』の再輸入は困難である。
中国のパンダ外交のように、野生動物が生息する主権国が輸出販売ではなく友好・好意・政治的意図から譲渡・貸与する方法は残るが、パンダ・ゾウ・キリン・コアラ・ホッキョクグマ・ラッコなどの希少動物を現時点から日本国内で大幅に個体数を増加させることは著しく困難か不可能で、また現代での動物園需要も大きくない。
施設内の交配促進によって、『希少動物の種の保存・個体数の維持増加』を図ることも動物園・水族館の目的であるが、自然環境下より妊娠率が低くなったり(交配自体行わない雌雄も多く)赤ちゃんの育児放棄のリスクもある。野生動物が棲息するアフリカやアジアでも乱獲・開発によって大型の希少動物は個体数を減らしている。
昔のように希少動物や動物由来の毛皮・牙・角などが高額で取引されるからと、無秩序な密猟が横行する事態は現代では許されないが、ワシントン条約で禁止されてもなおゾウやトラ、マウンテンゴリラなど大金を得られる可能性がある動物は密猟者のターゲットになり続ける。生物多様性や生態系保護、希少種も人間の価値だが。
動物の生態系は人間が関与しなくても、自然選択が繰り返されて絶滅する種も多く、今まで地上に登場した生物種の99%以上は絶滅したと言われているが、『人間の行為・意図』を絡めない生態系がより望ましいとする見方は強い。日本では農村の過疎化でシカ・サル・イノシシの個体数が激増し別の害獣指定・駆除の問題もある。
本当に手付かずの原生林や山野で、動植物が思いのままの生態系を構築すれば、人間は文明的・文化的な生活を維持できなかったり農業漁業などの生産性もガタ落ちになるので、『人間の生存・文明・快適・食料資源に害がない範囲での保護(個体数の増えすぎは害獣指定)』という但し書きは必要になるが。
ワシントン条約は『絶滅危惧種の存続のための学術研究目的』で輸入を申請できるが、その動植物等を学術研究目的以外には使用しないことを示す書類のほか宣誓書、研究の目的、必要性、研究体制、成果の発表方法等を記載した学術研究計画書等の書類を提出する必要があり購入のハードルが高い。輸出価格も高騰しているようだ。