ネット以前は凶悪犯罪でない限り『小さな悪事・迷惑行為』は当事者間の問題として処理され第三者は知り得ず言及もなかった。ネットは不特定多数が悪事・問題に言及する仕組みとして機能する。
「窃盗だろw」「桃の気持ち考えろ」――桃太郎で“ネット炎上”描く広告、狙いは? ACジャパンに聞く
ネット時代は『社会的制裁』の性質を決定的に変え、『小さな悪事・迷惑行為』でも個人情報が洩れると不特定多数から厳しく叩かれやすい。ネット炎上の典型である『犯罪・悪事に対する罵詈雑言(人格否定・厳罰要求)』は、自分を正義の立場に置く社会的制裁で、過去にテレビの前で言われた罵倒・非難が目に見える形になった。
ネットの仕組み自体が、それ以前の時代に見聞きできなかった『人の本心・内輪の放言』を可視化したとも言える。ネット炎上はネットが『正論至上主義』になりやすいことの反動であり、少しでも法律・道徳・マナーに反した行動を自慢のようにアップすると炎上リスクが生まれる。知人だけの狭い世界での『悪事自慢』は危うい。
ネット炎上の予防は簡単で、『公開範囲をコントロールすること(小さな悪事自慢をしたいなら内輪だけで公開)』と『第三者が見た場合に法律や道徳に違反していると見られる内容を公開しないこと』である。内輪では通用する悪ふざけや冗談も、社会一般では許されにくいものがあるが、若くて軽率なほどその差が分かりにくい。
例えば、高校生でタバコを吹かしたりビールを飲んでいる写真をアップした場合、同じヤンキー仲間なら問題は起きにくいが、『全体に公開』ならかなりの確率で法律・常識を根拠とする正論至上主義の人が介入してきてボロクソに叩かれ炎上するだろう。自分たち以外の第三者から見て法的・道徳的にどうかの想像力が必要である。
ACジャパンのCMは、ネット炎上でコメントする側に自制を求める内容になっているが、『悪事・迷惑行為に対する否定的なコメント』をなくすのは不可能だ。極端な話、殺人・強姦をすれば必ず叩かれて、SNSにページがあれば罵詈雑言で埋め尽くされ炎上するが、それを予防するには言論統制(アクセス制限)以外にはない。
自分の投稿が炎上しないようにすること自体は、上記したように『公開範囲と投稿内容のコントロール』で簡単にすることができるので自衛すべきである。また最高裁判決では『過去の犯罪事実を検索結果から削除することはできない』とされており、ネット時代で犯罪・悪事をするリスクはデジタルタトゥーと呼ばれるほど高い。