人間は近代化と避妊普及の過程で性的幻想で興奮するようになり、本能が壊れた動物としての特徴を強めたとされるが、現代人は『人間の動物性・私的領域の侵犯』を嫌う潔癖な傾向は強まった。
性欲は「子作り」以外には不必要? 「恋人に求められるのもつらい」との声も (http://mixi.at/agaQ4Gq)
こういった大人の行動を現代人が取らなくなっていること、年を取ることを嫌いアンチエイジングが流行っていること、いつまでも遊ぶ子供の精神を持っていることは、生物学ではネオテニー(幼形成熟)の概念で、長く成長できる高等動物の特徴として説明される。ヒトは心や行動が成熟で固まりにくい特殊な動物なのである。
人間含む霊長類の性欲は元々は意識的な生殖行動(妊活)のためのものではなく、自然界では雄の際限のない性欲と異性獲得競争の結果として、雌の妊娠出産という現象が起こってきた。女性の性の権利や同意が明確に意識され始めた歴史は人類の数十年しかなく、男性社会の権力と性欲が中心になって快楽幻想が構築されていた。
男性でも、もし自分が女性であったら、今ほどの性欲や異性の性への興味を維持できただろうかと想像してみると、男性の性欲に対する嫌悪感や面倒くささが少し実感できるかもしれない。今でこそ、法律や倫理の変化で女性優位な場面も増えたが、昭和期であれば、大半の女性は男性に対峙できない弱者で性的な拒否権も弱かった。
性的な価値が禁忌の侵犯にあるのは一面の真理ですが、現代人や若者の場合、『ポルノやバーチャルでお腹一杯の情報過剰』はありますが、実際には恋愛や性行為を経験しないまま、30代に入る人や異性との接点すらない人が急増しています。理想が高くなり似た者同士以外の現実のカップリングが成り立たない等。
この問題は深く考えると、未婚化や少子化も関わりますが、『性の希少価値はバーチャル(商売のベース)では大暴落しているのに、リアルの身近な範囲の異性として魅力を感じる素人ベースでは逆に高騰している』というねじれが基盤にあります。更にかなりの女性は本音では性欲は不要に近いと感じているでしょう。
性嫌悪・動物性嫌悪の拡大、男女の性幻想の対立(性的侵襲のない中性的男性を好む)というものは、常識的に考えれば、生殖適応度を落として少子化を進展させていくが、『性行為の介在しない試験管ベイビー・生殖医療の代替』が進む可能性はある。人は遺伝子保存戦略を先読みし、自動的妊娠システムから離脱した種でもある。