一般的に、『男心は単純、女心は複雑』というジェンダーの二元論は人口に膾炙しているが、男性が女性に対して単純になる前提条件として『その女性にモテたいと思っている男性』『その男性が好意・愛情・性的興味を感じている女性』『男性のその時点における異性関係や恋愛・結婚・生活の優先順位が高いこと』『異性としての新鮮さや意識が維持されている期間(どんなに美人でもその知覚に慣れてくると完全に思い通りになる男の単純さは弱まる傾向が生じる)』などはあるかもしれない。
女性に聞いた!「男性って本当に単純だな……」と思ったことはどんなこと?
それなりに美人だったり可愛かったりセクシーだったりする若い女性が、好意的に笑顔で話しかけたり積極的に誘いかけたり、困った感じでちょっとした事をお願いしたりすれば、妻・彼女がいない男性であれば(妻・彼女がいても倦怠期や浮気心で乗る可能性もあるが)、9割方はその好意・願いを受け止めてくれたり誘いに乗ってくるという意味では単純である。
若くて自分の外見・ファッション・話術に自信がある女性であれば、その若さと美しさが通用する限りにおいて、『同世代・やや年上の対男性とのコミュニケーション』は(特に交際の始まりの段階においては)概ね思い通りに事が運べるが故に、自分の魅力・影響力を過信することも多いだろう。
若くて美人なのに、恋愛や対男性との情緒的関係で上手くいかないことが多い(自分が恋愛でつらい目や苦しい状況に追い込まれたり理不尽に振られたりすることになる)とすれば、『自分の魅力以上の男性のみを対象にしているケース(恋愛・気持ちのパワーバランスや別離のショックの上で自分以上の影響力・魅力を持つモテる男への献身的・執着的なアプローチ)』に限られるからである。
自分の側ばかりが『追いかける恋愛(振り向いてもらおうと努力する恋愛)』であれば、平均以上の魅力を持つ女性であってもどうしても情緒的に不利な立場になりやすい。
女性に利用されたり振られたこと(別の相手に乗り換えられたこと)に落胆・憤慨した男性の話は多いが、男性に利用されたり振られた(裏切られた)ことに落胆・憤慨する女性も当然いる。ただし、女性の場合は『付き合い始めの時点では思い通りに動いてくれていた男性』が、付き合ったり結婚した後に変わってきた(自分を大事にしなくなった)というケースのほうが多いだろう。
これは相手の性格や信念、付き合い方を見誤ったが故の落胆・憤慨とも言えるが、若い時期の恋愛・男女関係であれば、元々『恋愛の魅力の引き合いであるパワーバランスの崩れ』や『どちらがより別れたくないと思っているかの愛着・次の恋愛機会(誘われる頻度)の可能性の違い』が影響した半ば必然の結果であることも多い。
恋愛・性愛といった異性関係の側面のみにフォーカスすれば、『男性のほうからアプローチしてくる魅力的な女性(美人・可愛い・セクシー)の比率』は『女性のほうからアプローチしてくる魅力的な男性(イケメン・かっこいい・セクシー)の比率』よりも高い。
あるいは、性的興味が強く妊娠のリスクがない男性のほうが『(関係を持っても良いと感じる)ストライクゾーン』が広いとも解釈できるが、『男性は恋愛において単純』という中にも、その場限り(一夜限り・身体メインの短期)の関係から継続的な交際(長期の交際や互助的・奉仕的な献身)までかなり幅広いグラデーションがある。
そのため、一般論としては男性は恋愛の初期・とっかかりにおいてはより女性から主導権を奪われやすく(気に入られたい好かれたい男性が自分から好きな女性に合わせたり喜ばせたりしやすく)、単純な条件反射にも見える反応を返しやすい。
実際に恋愛や性的関係がないとしても、知覚的な快感や親密になれる可能性を刺激してくれる好みの女性(悪くないと思っているくらいでも)には、好意的あるいは支援的に見える単純な条件反射の行動を起こしやすい。
美人な女性や可愛らしい女性が、愛想よく接したり異性として興味あるように近づいてきたり、食事や遊びのデートに誘ってくれれば、『他に裏切れない女性(家庭)がいる男性・女性憎悪(過去のトラウマ・性恐怖含む)が深刻な男性・Aセクシャル・女に騙されるのではという警戒心が強い男性(何かメリットがないと相手から来るわけがないといった自己評価の低さ・女性不信の猜疑心など)・世捨て人のような厭世家や抑うつ者、虚無主義など枯れた男性』でなければ、概ね予測できる範囲内の単純で好意的・接近的な反応を示してくるだろう。
こう書くと、男はやはり単純のようにも見えるが、これらは『(自分のことを好きか嫌いか分からない)女性に対する欲・遠慮』を根底にしているため、『女性に対してあまりに単純かつ従順な男性』は、これを女性の態度になぞらえれば『カマトトぶっている(本来の自己の性格や生き方をある程度隠している)』という可能性は否定しきれない。
男を手のひらの上で転がせる女性が幸せになれるとは言うが、『男性のほうが異性(女)としての自分を欲している状態・付き合いの浅い段階』では、女性が男性を手のひらで転がして思い通りに動かすことはそれほど難しいことではない。
問題は付き合って体の関係を持った後、長期的な視点における人間的な関係に移行した後であり、その段階において『男性心理の仕組み』を理解した上で本当に長く手のひらで転がせられるかどうかが、『単なる若さ・美貌の一時的な効果(慣れ・飽きによって次第に男の単純さ・御しやすさが低下していく)』か『男女・夫婦の関係性を知悉した手練手管』かの違いなのかもしれない。
男性の女性(家族)に対する単純さは、不倫(浮気)をしないとか家族のために頑張るとかいった『社会適応的・常識的倫理的な男性像』とリンクしたりもしているので、複雑な分からない人(対人関係・家庭生活以外の諸要因を複雑に思考し続ける人)よりも、単純な分かりやすい人(単純なように見せかけられる人)のほうが、実際の男女関係や家庭生活は上手くいきやすい部分もある。
『あの人が何を考えているか分からなくなった』という複雑さ・過去からの変化に対する理解困難は、一般的に男女・夫婦の関係にとっては危機的なものになりやすいし、『お互いにとっての単純さ』を失っていくということは自分の働きかけ・お願いによって相手がどう動くのか予測できないということ(仕事・家事育児・買い物・用事などやらなければいけないことをしてくれなくなる可能性があること)、安心して日常生活を営むことが難しくなるということだからでもある。
男女を問わず、『好きな相手のことがよく分かる(相手のことが単純に思えてしまう)』というのは厳密にいえば、『分かりやすい自分』をお互いにプレゼンすることによって、相手に隠し事がなく自分にとって一番大切なものが相手であることを承認し合うことであり、ある種の信頼と安定を確保する共同幻想ではある。
例えば、『あの人は大好きなカレー(ケーキ)を食べさえすればすぐに機嫌が良くなる』といった過度の人間性の単純化の言説はあるが、これも本心から人生にとって食事や好きな料理(お菓子)が重要だと考えているというよりは、『自分はそれくらいに単純で分かりやすい人間なのだ・少し自分に優しくしてくれれば自分は即座に良い自分になれるのだ』というある種のプレゼン(信頼関係・関係修復のトリガー)として機能する。
そのお互いの変化を疑わずに済む共同幻想を崩して『俺(私)はあなたに全てを理解されるほど単純ではない・明日の私が今日と同じようにあなたへの好意や家族への献身を示すかどうか分からない・身近な生活や人間関係以外のことにもっと自分の時間と労力、資金を費やしたい』という態度を示せば、『相手の全てを理解できないという現実の重圧感・気持ちが離れていっている感覚』のほうが強調されてしまいやすい。
そういった『分かりにくい二人・何を考えているか把握しづらい二人の関係』は中長期的には冷え込むか別れに至りやすいが、『単純バカでお決まりのやり取り・小難しい理屈(内面的な複雑さ)を差し挟まない相手に対する無条件の好意と協力』は、お互いを理解できる範囲内において興味関心を共有させやすくする(人生・生活の共有感覚や方向性の一致を感じやすくする)メリットがある。
男が女よりも行動原理(生き方)が単純というのは、『知り合って間もない段階・女性が異性として求められている時期』においては半ば本能的かつ反射的なものであるが、『付き合ったり結婚したりした後の段階・性愛よりもお互いの人間性やコミュニケーションに重点が移った時期』においては、『自分が相手の理解・予測できる範囲内に常にいることを示す関係維持(共有感)のためのシンプル化の取組み』なのかもしれない。
男性には男性の単純さ、女性には女性の単純さがあるとは思うが、男性の単純さは主に『恋愛面・求愛面・逆境期(孤立・自暴自棄による堕落)』において顕著となりやすく、女性の単純さは主に『生活面・経済面・順境期(現状や家庭の保守主義)』において顕著となりやすいように感じる。