消費税増税の低所得者対策としての“軽減税率(複数税率)”と“給付つき税額控除”、どちらが良いか?

軽減税率導入が見送られれば、学会員に生活必需品の増税はないとした公明党の顔は潰れるが、主にスーパーやコンビニで買われる『生鮮食料品・日用雑貨』以外の何を軽減税率の対象にするかの議論は紛糾する。

消費軽減税率は「長期検討」=15年改正で―自民税調

生存権に関わる食料品にできるだけ重税をかけないとする『軽減税率(複数税率)』には、軽減税率の対象を決める基準設定の難しさ、複数の税率を合わせて計算するレジ・会計事務の転換コストなどの問題がある。もう一つの低所得者対策として、所得税から消費税増税分をあらかじめ減税する『給付つき税額控除』もある。

マイナンバー制度とひもづけられた金融機関の口座のチェック機能が高まれば、『正確な所得捕捉率』が高まるので、給付つき税額控除の導入に向けたハードルは下がる。所得が少なければ所得税から消費税増税分を減税して、それでも足りないほど所得が少なければ『一定の金額』を給付するのが給付つき税額控除である。

給付つき税額控除の問題は、所得が少ないほど『給付される毎年の一時金』の金額が上がるので、自営業・小規模事業者(現金取引の業態)において金融機関にお金を預けず現金で所得を貯める『所得隠し(脱税行為)』の誘因になりやすい。無収入でも現金を給付すべきかの論点もあるが、低所得者の可処分所得は増える施策だ。

だが政府・財務省の本音は、できるだけ薄く広く徴税したい、所得税を納付せずに済む所得水準の人からも税金を取りたいということなので、『軽減税率・給付つき税額控除による低所得層の負担軽減』はできるだけ弱くしたいという思いはあるだろう。薄く広く徴収しないなら、消費増税でなく所得増税でも良いのだから。