『テロとの戦い・憲法改正・日米同盟強化』を掲げる安倍政権と日本人の生命・財産の安全

戦後日本の在外邦人の生命・安全は元々危険な状態にはなかったはずだが、安倍首相が『テロとの戦い・戦争可能な改憲と国軍化・米国の軍事外交の補完勢力化』を掲げて国民の政治リスクを自演的に高めた上で、もっと強力な海外にも行ける軍隊が必要と言ってるだけだと思うが。

安倍首相、対テロ前面に=経済・地方重視―施政方針演説

『テロとの戦い』を施政方針演説で前面に打ち出す事は、日本国はイスラム国はじめ『イスラム過激派勢力の敵』である事の明確化でもある。在外邦人だけでなく国内の日本人も、イスラム過激派の脅威が高まる恐れがあり、安倍首相の演説内容と政策方針で『日本人の生命と安全』がこれまで以上に守られるというのは常識的には有り得ないように感じる。

世界にイスラム教徒は約13~15億人もいて、テロ・紛争を引き起こす過激派勢力はごく一部だが、『反欧米・反近代の思想を持つムスリム』は潜在的に膨大な数が存在する。日本は米国の同盟国だが『対中東の自由化の戦争・テロ掃討』からは距離を置いていた事で、反米勢力から軍事的政治的な敵対者とまでは見られなかった。

『中東地域におけるテロとの戦い』の公言、『今以上にテロとの戦いに資金・人材を投入する』との見通しを示せば、日本は米国の形式的・地域的な同盟者であるというエクスキューズは通用しなくなり、『アメリカ同等の敵・日章旗と遭遇すれば戦闘』という位置づけでイスラム過激派勢力と向き合う可能性が高まる。

アメリカでさえ中東における地上軍派遣・テロ掃討へのマンパワー投入に『世論の同意』が得られなくなっている危険地帯・泥沼化が、現在のイラク・シリア・アフガン一帯。『テロとの戦い』はこの超危険地帯における役割を率先して果たす道へ誘導されるリスクを孕み、はまりこめば抜け出すのは米国同様に容易でない。

『テロとの戦い・有志連合への賛同姿勢』は、大局的には日米同盟強化と軍事的な双務性を米国に押し付けられる構造の中で不可避的に選択させられているという疑念がどうしても残る。平和憲法の破棄と自衛隊の国軍化、積極的平和主義と安全保障強化の名目で海外派遣を増加させれば、本当に日本人は今より安全な状況になるのだろうか?疑問ではある。

本質を見れば、米国が一国だけでは担えなくなってきた世界秩序の維持コストを日本に肩代わりさせたいとの思惑、特にカネだけでは足りないのでもっと血と汗を流し中東地域における有志連合・自由民主勢力の軍事的プレゼンスに貢献せよ(その代わりに東アジア・太平洋地域で米艦隊がにらみを効かせてやる)との意図が見える。

確かに非人道的な拉致・誘拐・虐殺等をするイスラム国(IS)は『自由世界の敵・人類の倫理の破壊者・力の支配と奴隷制度への逆行』の面があり、日本が『世界の警察的役割』にカネ・汗・血を流しながらコミットする大義名分の解釈も可能だが、欧米利権が関与した中東紛争・テロの原因や歴史と日本は元々つながりは乏しい。