学習院大学の学生だが登山実績と技術から言えばプロ登山家と遜色のない人物の遭難事故である。体力・実力がバラける団体登山の弱点が露呈したような事故だが、一緒に登った友人や恋人が低体温症で弱っていて置いていくのは困難で、『不可避な運命』として遭難死してしまった側面が強い。
登山は確かに自己責任のスポーツ・娯楽だが、団体登山では『友人知人と一緒の条件』により、遭難時に弱った誰かだけを切る判断が難しい。リーダーあるいはその人と関係の深い人はその場に残って付き添う選択に迫られる。山岳部含め団体登山は単独登山よりも安全という常識は、現実には必ずしもそうではないケースがある。
過去に起こった登山の遭難事故でも、『単独なら帰れる体力・可能性』が十分あったが、『夫婦・恋人・友人と同行の条件(誰かが弱って動けなくなった状況)』によってその場に留まりビバークし低体温症で死亡した事例は多い。ツアー登山の遭難では人間関係がそこまで強くない為、独断で団体を離れて下山し助かった例もある。
冬山登山の難しさや恐ろしさは『吹雪・雪崩・雪庇や氷からの滑落』といった自然と相関する要素もあるが、それ以上に『僅かな体調の異常・気象条件の悪化や気温低下』によって、平時に相当な体力・精神力があるような登山者でも、短時間で行動不能になることかも。低体温症になると冬山の低温環境下では自然な回復は困難だ。
遭難回避でできることは、僅かでもいつもと違う体調の変化や気分の悪さ、足取りの重さを感じたら、まだ集団全体が余裕のある時点で申し出て、付き添ってもらって山小屋・安全な場所まで戻る事だろう。体調が悪いと言ったら、せっかくここまで来たのに皆に迷惑がかかると思いがちだが、歩けなくなれば皆で遭難の危機になる。