フォルクスワーゲンのクリーンディーゼルの性能とされたものは、外国メーカーに対する参入障壁として機能してきた。『ディーゼル車の環境性能・普及率の高さ』は、EUの環境保護意識の現れとして解釈される事も多かったが、根幹の排ガス性能自体が予め偽装されていたインパクトは大きい。
不正の誘因になったのは『米国市場における低シェアの巻き返し』で、アメリカはEU以上に窒素酸化物(NOX)の規制水準が厳しく、従前のディーゼルエンジンでは排ガス規制をクリアすることが困難であったため、排ガス検査の時だけ窒素酸化物を減らす不正ソフトウェアが導入されたようである。
トヨタと世界販売台数のトップを僅差で競い合っていたフォルクスワーゲンだが、単純なブランドイメージの低下に加えて、『最低2兆円以上』とも言われる排ガス関連問題での損金発生は企業の経営基盤を揺らがしかねない。米国等で購入者による集団訴訟が提起されて、VWに追加的な損害賠償の支払いが命じられる可能性もでてきた。
フォルクスワーゲンは高級感のある派手な外国車のデザインが好まれやすい日本では、メルセデスやBMWよりもブランドイメージは弱いが(いかつい車が売れる米国でもデザイン面で好まれずシェアは低いが)、『国民車』という社名が反映するように良くも悪くも『ベーシックで堅実・悪目立ちしない大衆車』に強い。
フォルクスワーゲングループには、スポーティーな高級路線である『ポルシェ・アウディ・ランボルギーニ・ベントレー』のブランドがあるので非大衆車の競争力もあるが、一般大衆には手の届かない価格帯の車ばかりではある……先進国においてアウディのデザインが受けて、販売台数の伸び率が高い。
フォルクスワーゲンは、2014年度の自動車会社のブランド価値では、トヨタ・メルセデス・BMW・ホンダに次ぐ5位にランクインしているが、今回の排ガス不正問題でかなりのブランド価値毀損が起こると予測される。