保守派を自認する安倍政権にとってリベラルな今上天皇が「戦後レジーム・戦後民主主義の代弁者」になっている構図はシニカルだが、日本にとっての象徴天皇の位置づけは歴史・民意の結節点になりやすい。
“改憲・安保法制(集団安保)・歴史教育(大東亜戦争の評価)・沖縄基地問題”などは、確かに安倍政権の特徴の一つで、多くの政治対立の原因となっているが、日本の時代精神や外交・世論が180度変わる時には、当代の天皇陛下ではないにしても、今上天皇の発言・価値観にも何らかの変化が見られるはずだ。
天皇の治世が『元号(明確に区切られる歴史的時間軸)』と共にあるという『時間支配の記号化(数値化)』は、世界的に見ても世襲王朝が断絶した民主国家ではかなり特殊な遺制だ。昭和の戦争が大東亜戦争を想起させるように、日本人の時代感覚・価値・記憶と元号は現状では西暦以上に切り離せない所与の時間概念である。
天皇陛下本人が老いの影響を折に触れて述懐されているが、天皇が崩御するまで『元号』が続き、原則引退できない慣例は健康・人権の観点からも改める必要がある。明治以前の天皇は上皇・法皇になる事ができたが、近代日本は院政の歴史等から『最高権威の分裂・万世一系の乱れ』を警戒し、元号・天皇の唯一性を強調した。
東証一部上場企業の正社員と公務員の『夏・冬のボーナス金額』が、『子供・女性・非正規の貧困の報道』とセットで繰り返し報じられる効果は日本の階層意識・自己評価・子の教育指針に少なからず誘導的・競争的な影響を及ぼすものではある。
大企業の正社員と役所の公務員として働くことが、日本の中流階層へのオーソドックスなキャリアパスである(それと対置される貧困・格差)の報道は、戦後日本で繰り返しされてきたが、『階層固定化・貧困の警戒・競争圧力』が『自己防衛的な少子化・消費抑制』と悪循環のスパイラルを起こしやすい現代的な問題も生じた。
先進国は法的身分(権利主体)としての国民は平等であるが、潜在的な階層意識と生活様式の分断は日本だけではなく欧米でも進んでいる。第二次世界大戦前後の社会と比較すると、戦乱のない安定した国・経済の体制の中で『階層流動性+出生率の低下』が社会全体の活力・意欲を停滞させ、欧州では若年失業率が上昇し続ける。