認知症・要介護者の同居家族に対する家族の監督責任・賠償責任はどこまで認められるべきか:認知症の在宅介護の限界

愛知県で認知症の91歳男性が電車にはねられた死亡事故で『家族の賠償責任』は認められないとする妥当な最高裁判決がでた。注意すべきは『認知症者の事件事故に対する家族の賠償責任を無条件に免除するわけではない』ということ。仮に介護者の年齢が若く十分に監護できる生活実態があれば事故の賠償責任が生じる恐れがある。

岡部喜代子裁判長は、認知症の人や精神障害がある人の家族などが負う監督義務について『同居しているかどうかや介護の実態、それに財産の管理など日常的な関わりがどの程度かなど総合的に考慮すべき』という判断を示したが、認知症者の面倒を見れないと判断した家族の『同居・介護の回避』を促進する恐れもある。

この問題は認知症者の介護を巡る親族間の責任配分とも関わるが、『日常的に関わって介護をしている親族』のみが非常に重い責任を負うことになり、もしもの時には認知症者が引き起こした事件事故によって『日常生活・行動範囲に対する監督義務を怠った』として巨額損害賠償を請求される危険もあるという事になる。

逆に『俺(私)は知らない・長い間会ってもいない・○○に任せていた』として知らぬ顔の半兵衛を決め込み、初めから関わらない親族(介護担当者のきょうだい)には責任がなくなる不公平もある。老々介護を考えれば政府の『家族内介護』は現実的に不可能だ、賠償責任の大幅免責と施設介護・ロボット介護の促進を模索すべき。

正直者や情け深い人、親孝行な人だけが馬鹿を見る可能性がある、『後期高齢者・認知症者の監督責任』については、よほど明らかな落ち度や故意の犯罪勧奨などがない限りは、原則として経済的賠償責任は免除すべきであり、軽症含む認知症者が1000万人を超えてくる現代では社会全体で分有すべき脳機能低下・老化の問題だ。

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