NGO『国境なき記者団』が発表した『報道の自由度ランキング』のトップ5は、フィンランド、オランダ、ノルウェー、デンマーク、ニュージーランドだった。いずれの国も国際政治・国内政治におけるしがらみからの自由度が高く、国家機密の隠蔽を強制するような法的制約も弱いため(裏返せば国際的な政治経済状況におけるプレゼンスが弱いため)、報道に対する内外の圧力に屈しない姿勢をメディアが維持している。
北欧を筆頭とするEU諸国は、政権・政党・宗教や国際情勢におもねらない中立的視点からの多角的な報道姿勢、聖域を減らしリスクを覚悟した取材の裏付け、できるだけ多くの情報をオープンにしてから議論にかけるジャーナリズムが評価されている。
日本は今回のランキングでは、11位ダウンして180ヵ国のうちの72位だったが、『特定秘密保護法案(罰則つきの取材・報道の牽制)・政権与党の圧倒的優位及び政権長期化(野党・批判勢力の弱体化)・政治的裁量によるメディア規制検討の高市発言』がマイナス要因として働いている。
国民の政治経済の報道に対する関心低下、国政選挙の投票率低下なども『報道の自由度の低下』に関係しているが、『国民自身が報道の自由が抑制されているという意識や不満を持たないままのマスメディアの自主規制』というのが率直な現状に当たるだろう。
国際的にも、イスラム国の台頭、地域紛争とナショナリズムの強化、政治思想を持つ富豪のメディア買収、戦争とテロの安全保障、格差・貧困問題による政治的意見の過激化(過激化と無関心化の同時進行でバランスの崩れ)、メディア規制の法制などによって、報道の自由度やメディアの独立性は低下傾向にあるようだ。
先進国では、ドイツ16位、カナダ18位、イギリス38位、アメリカ41位、フランス45位、イタリア77位である。独裁政治や強権支配、報道規制、インターネット規制、紛争事態などによる報道の自由度のワーストは、ロシア148位、中国176位、シリア177位、トルクメニスタン178位、北朝鮮179位、エリトリア180位が入っている。
エリトリアは『アフリカの北朝鮮』と呼ばれる一党独裁制の国で、あらゆる言論・報道・移動の自由が規制され、政府が恣意的に国民を徴兵徴用することができ(いつ労働力や兵士として駆り立てられるかわからず拒否権はない)、反政府運動に関係したと疑われれば令状なしの身柄拘束、不公正な裁判での即日の死刑執行などむちゃくちゃな統治の状態にあるとされる。
エリトリアは政府批判の意見を出せないという言論統制のレベルを超えており(そもそも政府広報以外の独立したメディアは合法的に運営できない)、明日の我が身(身体・行動の自由)が危うい国民監視国家であるため、大量の政治難民を日々生み出し続けている。