ソフトバンクの孫正義社長が後継者に指名していたインド出身のニケシュ・アローラ副社長を切った。アローラの能力に惚れ破格の高待遇でヘッドハントしたが、現役バリバリの孫さんが引退時期を明確化させないまま、上昇志向の強いアローラを後継者指名していた情況では、いずれ確執・仲違いが起こる事は必至だっただろう。
孫正義はGoogle時代のニケシュ・アローラの実績を高く評価して、ソフトバンクグループのトップが務まる器と見た。だが孫の描く成長路線においてアローラのキャリアはあまり活用できず、成果もあまり出せなかった。孫の支持を失うと、人間関係がぎくしゃくしていた(他の社員に対する人事権を振りかざしたりもしたという報道もあったが)権力志向のアローラの居場所がなくなったとの見方もあるようだ。
孫正義社長はそろそろ引退との考えをちらつかせながらも、『他人にソフトバンクグループ全体の指揮を任せる覚悟』は完全には固まっておらず、アローラ氏も暫定的な後継者指名に過ぎず、いつ気が変わるかわからないし(方向性・価値観が合わなければ切るし)引退しても会長として院政を敷く可能性が高そうである。
最近も孫正義社長は中国のネット通販大手のアリババ株やゲーム会社のスーパーセルやガンホーなどを数兆円単位で大量売却する計画があるとして、『財務体質の改善+投資分野の切り替え』をドラスティックに行うなど新分野への投資意欲が強い。ペッパー君をはじめとするロボット・人工知能・IoTに投資するようだ。
ソフトバンクは無謀と言われたボーダフォンの携帯会社買収などで約12兆円の有利子負債を抱えているので、現時点でどれだけ利益が出ていても成長を止められない綱渡り経営の側面がある。孫正義という事業・投資の成長を追求し続ける異才のトップを失えば、財政的リスクが出るかもしれず後継者に求められるハードルは高い。