日本は学卒後の正規雇用キャリアから外れると、特別な専門性や技術力、経営能力・稼ぐノウハウがない限り『蓄積のない不安定・低賃金の雇用』に嵌りやすい。中高年無職から貧困老人の問題は深刻だ。
中高年で正規雇用のキャリアから外れたり、若い頃から無職・ひきこもりが続いた場合、いざ働こうとすれば『雇ってくれる職場』と『雇ってくれる仕事(多くがきつくて低賃金でやめる仕事)への適応力』が問われる。バイトも『清潔な身なり・外見の良い印象・コミュニケーション力・若者との協調』がないと中年は雇われにくい。
ここ20年で進んだ中流階層崩壊の意味は、『取り立てて優れた能力・技術・知識がない人が平均所得を稼げる仕事』が大幅に減少し、学卒後に最初に入った解雇規制や労組の圧力のある大組織を離れれば、大半の人はまともに稼げないということ。老親の年金に頼る中高年のワーキングプアや無職は構造的に増加、年金も減額される。
無論、ネット社会ならではの所得を得るスキルやノウハウは少なからずあるが、企業・公務員の雇用に頼らずに自力で平均所得水準の稼ぎを安定して得ることは、高度なキャリアや技術を持っている人でも一般に簡単なことではなく、絶えず時代・知識・ビジネスのキャッチアップの学習を続けるきつさもある。
40~60代まで殆ど働いた経験がない人が、選ばなければ仕事はあるといっても、それなりに働いてきた人でも早期離職するような『ブラック企業・3Kの肉体労働・飛び込みのノルマ営業・暴力暴言飛ぶ職場』に適応できるかといったら恐らく無理だろう。職業訓練・資格取得で即戦力も若者前提で中高年は不可視化されやすい……
工場の軽作業、タクシーや運輸、警備員、客層の年齢が高い店員などのバイトなら未経験の中高年層でも雇ってくれて地道に続けている同世代者もいるはずだが、長期無職者層はやりがい云々を机上の空論で低く見積もる自意識肥大な人も多く、初期の動機づけのため、相当生活が追い込まれるか自意識を大幅に転換しないと難しい。
働けない中高年の子・孫が低年金の親にカネを無心したり暴れたりして、どうにもならなくなりどちらかが殺される事件は、貧困の再生産・階層固定化の問題の側面もあり、中途半端な世帯の豊かさの凋落プロセスの現れでもある。昔は最低限の扶養もできぬ貧しさで、貧困家庭に子が留まる事が10~20代の間でも困難だった違いは大きいのだろう。