『人生100年時代の社会保障』は持続可能なものか?:年金支給開始年齢の引き上げや年金減額のリスク

『人生100年時代の社会保障』というが、40代以下は負担に対する給付が大幅なマイナス転換するので、今以上の負担率で『支給開始年齢引上げ・支給金額引下げ』をするなら年金制度の意義は弱まる。

<自民>年金年齢引き上げなど提言 経済財政構想小委員会

戦後のビジネスモデル云々というより、『賦課方式・終身給付・現役所得の代替率60%以上』の公的年金を、高額療養費を大幅免除する公的医療保険とセットで長期維持するハードルは元々高い。経済成長・人口と所得の増加が持続する期間はどの国・地域も限定的で、先進国となり経済・自意識が成熟すると需要も落ちやすい。

戦費調達を近視眼的な目的とする公的年金制度が発足した当初の平均寿命は60歳前後で、55歳からの年金支給でも5?10年程度の支給で死亡する国民が多いから、実際の年金負担はさほど大きくならないという甘い見通しに立っていた。戦争で若くして亡くなる人も多く、国民の人権意識や生命尊重が弱かった影響もある。

公的年金制度が発足してしばらくは、実際に大勢の高齢者が年金受給を開始するのはまだまだ数十年も先の話で現実味が乏しかったという無責任体制もあるし、平均寿命が80歳以上にまで伸びる(年金を15?20年以上受け取る人が多数派になる)ということや経済成長が長期にわたって停滞してしまうことは想定外でもあった。

昭和後半から『預貯金の多い高齢者が(実質負担が相当に小さい)年金で悠々自適の老後生活』という固定イメージが広がってきたが、1990年代のバブル崩壊以降は若年層の雇用や所得が低迷・悪化し、『資産・蓄えと社会保障の二重の世代間格差』が問題になった。高齢者間の貧富格差も大きく生活保護も増えているが。

社会保障と老後の人生設計の問題は、終身雇用の慣行やバブル経済の恩恵があったはずの『今の時点の高齢者』でさえ、生活保護になるような大きな格差や貧困があったり、低年金・無年金の人も多いという事で、自己責任だけでは解決できないほど今後数千万人単位で老後破綻者が大量に生み出される恐れがあるという事だろう。

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