日本の格差拡大・経済階層とトマ・ピケティの『21世紀の資本』:日本で資産1億円超の富裕層増加

昭和期には高度経済成長が見せた一億総中流の幻想があっただけで、元々日本には一定の経済格差がある。数十億円以上の資本家・創業一族(政官財の有力者一族)・財閥系の巨額資本は崩れておらず、先祖代々の超富裕層の顔ぶれも大きく変わっていない。

資産1億円超の「富裕層」が増加中、なぜ?

確かに昭和期の学歴・就職による階層流動化はあったが、それは庶民が一流大学に行き大企業の社員や官庁の公務員となり40年間勤め上げれば、この記事でいうアッパーマス・準富裕層になれる流動性である。政官財の歴史・資本・人脈に張り巡らされている閨閥のある富裕層以上にまで上れる庶民など数える程しかいなかった。

資産1億円超の富裕層が増加した理由は、『富裕層の生前贈与で巨額資産が子孫に早めに分散された・人口の多い団塊世代が退職金を受け取り始めた・退職金で金融投資する層の増加+アベノミクス以後の株価上昇の影響』であり、『労働所得の上昇』は関係しておらず、恐らく40代以下の世代には余り益のない話でもある。

トマ・ピケティの『21世紀の資本』が理論的に解説したように、市場が飽和し成熟した資本主義経済では、一部の特殊な経営者や技術者、役職者を除いて『投資所得(金融資本)の成長率>労働所得の成長率』となるから、階層流動性が低下して既に資本を持つ会社・個人の財産が増大しやすくなる。結果、格差が拡大してしまう。

近代初期には、教育投資によって労働所得を高めることが『階層流動性』に直結したが、大学進学率が高い現代は昭和期と比べると『教育投資によるリターン(職業的地位・平均以上の所得)の確実性』が落ちた。労働所得と比べ金融所得というのは学校教育とは余り相関せず、家・所期の財産額に多くが規定されてしまう。

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