米国トランプ大統領の『TPP離脱の大統領令』と『反自由貿易(保護主義)』についての感想

トランプ大統領は既に『TPP離脱の大統領令』に署名したようだ。更に米国人労働者の雇用・収入を守るとする『保護主義』の象徴として、トランプ自身がTPP離脱をマニフェストの中核に置いているため、支持層の反発からも翻意は難しい。

米トランプ政権のTPP脱退、翻意促したい=榊原経団連会長

TPP(環太平洋経済連携協定)は、最近までアメリカが日本に押し付けてくる米国ばかりに有利な自由貿易の拡大と見られていたが、選挙でトランプ大統領が誕生してからは米国(米国民の労働者)に不利益が多いという正反対の見方がなされるようになった。経済成長ではなく製造業中心の雇用を守る姿勢に転換した。

再びアメリカを偉大にすると訴えるトランプ大統領の米国第一主義(アメリカファースト)の施政方針演説は、理念は『ワシントン政府・多国籍企業からの権力と富の奪還(静かな革命)』であり、その実践は『アメリカ人の中流階層(庶民が勤勉に働けば中流の富を得る製造業雇用)の復権』にある。労働者の立場・利害に徹した。

トランプ大統領本人は経営者であり資産家だがその富の多くは『自由貿易の外需』ではなく『米国民の内需』によって生み出されたこともある。今まで顰蹙や非難を浴びながらも『世界の警察・自由貿易の旗手・オピニオンリーダーの役』にしゃしゃりでてきた米国が自ら国際社会の秩序策定の役を手放すような仕草を見せている。

トランプ大統領の演説は各国にも共通する日本人にも当事者性のある『貧困・格差・雇用流出(収入減少)』に焦点を当てたもので、保護主義や自国民最優先の内容だけ聞けば『なるほどそれも道理』と思うかもしれないが、『米国の国際的・歴史的な方針の一貫性放棄』は世界各国にハードランディングのリスクを押し付ける。

TPPの急な離脱、外国製品を締め出す関税、中東など世界の紛争問題への介入抑制にしても、ロシアのプーチン大統領への蜜月アプローチ(クリミア問題の制裁解除)、メキシコの不法移民の過剰な敵視にしても、『米国が今まで普遍的として外国に押し付けた価値』を急に反故にして今度は外国に不利益を押し付ける問題がある。

トランプ大統領の持つ間違った思い込みは、第二次世界大戦後の20世紀後半から現在にかけて、米国主導の世界秩序や自由貿易(市場経済拡大)、軍事活動(同盟・集団安保)の大半を『諸外国のための無償奉仕活動』と捉え、『米国人だけが犠牲になって外国を豊かにし防衛してきた』と被害者意識で語っていることだろう。

自国経済は保護主義を貫き、他国には自由貿易を迫る。  この手法は中国共産党と同じなので、次の大統領は さぞかし保護主義貿易の国々とは交渉がスムーズに運ぶだろうと思います。自国第一主義。ぱっと思いつく当たりでは中国以外にも、ロシア、イギリス、EU中枢国。世界経済の潮流は、どうなっていくでしょうね。

『アメリカの製品を買う・アメリカ人を雇う』という二つのシンプルなルールを守り国境の壁を高くして『外国の侵害から守る(米国人は職と富を奪われるいつも被害者・いつも負け組らしい…)』というのは、端的な保護主義のブロック経済だが、本気でこれを実現すれば『米国が勝ち続けて偉大になるより先細り』になりそう。

トランプ大統領の政策・演説とそれを熱狂的に支持する白人労働者層から、私たちが改めて読み取るべきなのは『アメリカ人の国際社会(諸外国・グローバリズム)に対する意外なほどの被害者意識の強さ・世界秩序主導から撤退したい意思(内向き称賛)』で、『米国内の格差・貧困,白人ブルーワーカーの中流層の凋落』もある。

米国は世界最大のGDPと軍事力を保有する国で、歴史的に国際社会の価値を誘導してきた国が、他の中小国と同じ感じで『あなたも自分が一番大事なように、アメリカもやっぱり世界秩序や貿易秩序云々より自分が一番大事ってことに気づきました。今までの主張や圧力は撤回、内需重視、貿易規模縮小でよろしく』は無茶な話…。

そもそも、アメリカは資本主義国家であり、消費者は市場で商品やサービスを比較して購入するわけだが、『メイド・イン・アメリカだけを買うべき・アメリカ人だけを雇ってアメリカ製品だけ買う忠誠心を示せ』といっても、共産主義国家でもない限り経済を政治だけで統制できるはずもない。全商品に法外な関税や突然の規制か。

トランプ大統領は大企業の工場労働(特に自動車・半導体・製品組立など)の雇用を特別に重視し、工場が海外に移転して米国が衰退し中産階級が壊滅したと考えているが、ITだの金融だの自由貿易だので『産業構造の転換』を主導して広めていたのは米国では…第二次産業は利益が厚く良かったの懐古論はどこの国も多いが。

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