○仏教の存在論は『アビダルマ(上座部の有部)』と『唯識・中観(大乗)』に分けられる。アビダルマは『思惟』を、唯識は『知覚』を『モノの本体』として『モノの実在』を考える。哲学史の『主客論争』に似る。モノに実在なしとする諸法無我は、『知覚するモノは無常・思惟するモノは知覚できない』で論証される法印である。
唯識の祖である竜樹(ナーガールジュナ)は特に、人間の頭(意識)の中のみにある知覚対象を持たない思惟の世界を『非実在』として『思惟=頭の中の意識による構想=非実在の虚構(モノは現象として過ぎ去る』とした。一般常識では、他者と共同で知覚されたものは『モノの実在・事実の確認』とされるが仏教は唯心論に近い。
仏教は一神教のような神を持たないとされるが、諸行無常・諸法無我・一切皆苦・涅槃寂静など『超越論的な世界・人間のメタ観察者の視点(四法印認知の視点)』そのものが『神の視座(無常な実在なきモノの生死・流転をただ現象面の様態変化としてフラットに見続ける非人格的視座)』として仮定されているように思われる。
○介護福祉士の養成学校の16年度の定員枠約1万6700人(377校)に対し、入学者数は約7700人で06年度以降最低に。定員5割を満たせず、介護業界の労働力・若者不足は深刻化の傾向が強まっている。ドイツは徴兵の代わりに福祉・介護の義務を選択させるが…雇用の市場原理だけで解決の難しい構造問題とされる。
06年は1万9200人の入学者だが、わずか10年で介護福祉士の希望者が6割以上も減少した。介護職の現場の情報・離職率によって若者に選択してもらうのが難しくなっている。飲食・運輸なども同様の事情で若年労働力の奪い合いの市場で劣勢とされるが、報酬やイメージから医療・看護は逆に競争率が高まった業界である。
介護福祉士の受験者急減の追加報道があったが、減少の原因は『職業の需要』自体ではなく『受験資格変更(450時間の実務者研修)』によるものということのようだ。介護福祉士になるには『実務経験ルート・福祉系高校ルート・専門学校ルート』の3つがあり、実務経験ルートは従来は3年の経験で良かったが『日数・費用のかかる研修』が追加になったのである。
学校に行かずはじめから介護現場で働いてから資格を取る実務経験ルートは『実務経験3年以上+国家試験』だったが、『実務経験3年以上+450時間の実務者研修(費用10~20万・期間は半年程度)+国家試験』に変更されて負担が重くなり職場の協力も必要になったために、応募者が減少した。
専門学校(養成施設)ルートは、履修2年以上で介護福祉士になれて国家試験も免除されるが、高卒・社会人など初めから介護福祉士になりたい人しか入学しないので、毎年約9千人しか資格を得ていない。実務経験ルートの取得者は約8.5万人で専門学校に行く人は元々が圧倒的少数派なのだ。福祉系高校は『履修3年+国家試験』になるので、専門学校ルートよりは年数がかかり国家試験をパスする必要もある。