アサド政権の化学兵器使用疑惑に対して、アメリカがミサイル攻撃を実施:米国の単独外交主義(ユニラテラリズム)の問題

シリア内戦は米露の対立図式が背景にあり、『反アサド=米国・シリア人スンニ派・クルド人・IS・トルコ』の利害が複雑に絡む。シリアの化学兵器使用への制裁であっても、米国単独の攻撃は国際法上の問題はあるが、化学兵器使用を許さない前提が米国は非常に強い。

独裁国家の主権性を—死者・着弾数…食い違うミサイル被害 米国とアサド政権

トランプ大統領は『世界の警察』をやめると宣言したが、国家安全保障会議NSCのメンバー刷新(極右の非現実路線のスティーブ・バノンなど排除)で、再び自由主義圏の世界秩序維持を図る軍事行動に出てきた面もあるか。化学兵器を使用した戦闘機が本当に『ミサイル攻撃した基地』から飛び立ったかの検証も重要だ。

戦争の被害を受ける側からすれば、化学兵器でも銃火器でもミサイルでも殺されれば一緒といえば一緒かもしれないが(民間人虐殺の結果になりやすいという問題はあるけれど)、大量破壊兵器とされる『ABC兵器(核兵器・生物兵器・化学兵器)』の製造使用は国際社会の禁忌・脅威で、特に米国は武力行使の正当性の十分な理由になるとして武力制裁を躊躇しない傾向が強い。

化学兵器は効率的に広範囲に散布されれば大量死をもたらすだけでなく、中枢神経系や感覚器官に深刻なダメージを与えて、解毒・治療を受けて救命されても生涯続くようなつらい後遺症が残存しやすい。その意味で、大量殺戮リスクだけではなく人間の神経系・感覚機能を不可逆に破壊する非人道的兵器としての側面がある。

アサド政権が本当に化学兵器を製造・使用したのかの客観的な検証は引き続き行われるべきだが、外国・テロ勢力も加担する『反政府勢力』とはいえシリアの自国民を何年にもわたって殺し続けているアサド政権は、独裁の是非を抜きにしても『国民保護の政治権力の正当性』を既に失っていると考えるのが自然だろうが。

シリア内戦も『アメリカ・イギリス・フランス・(日本)』と『ロシア・中国』といったお馴染みの国連安保理の対立図式が踏襲されるが、ロシアや中国は自国の民主主義・自由度・人権状況に弱みを抱えるので、どうしても『独裁国家・人権を尊重しない国家の主権性』を擁護する側に回りやすい。シリアは北朝鮮とも親しい。

国連安保理が『自由・民主主義・人権・国家主権・戦争』の価値観で既に一致してないため、『国際紛争・国家の自国民虐殺・内戦の悪化』などに対して国連安保理の制裁決議が機能しない場面がどうしても多くなる。米国のミサイル攻撃は国際法違反だが、シリア内戦自体が収拾がつかない人権蹂躙・民間人殺害の無法状態である。

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