精神分析家の故・小此木啓吾氏が随分前に『自己愛人間』を書き、現代人の自意識は社会・他者から離れ自己愛化したと指摘したが、SNS・プリクラの『自撮りのセルフィー文化』はその先鋭でもある。
スマホのカメラが高機能化して撮影後の修正も簡単になったことで、インスタグラムには『モデル・芸能人のようにばっちり決まった一般人』や『仲間と盛り上がる場面を切り取ったカット』が溢れている。自撮りのためのカメラ性能の向上で、『自分が満足のいく自己像・楽しい場面の撮影の公開と蓄積』は自己愛的な快楽を煽る。
今の時代というか今の若い人は過去よりも、スマホの写真とSNSの文化によって『自分(自己像)が好きか否か・人に自分や生き方がどのように見られているかの想像』によって主観的な満足度を左右されやすくなっているとも言えるが大変そうだ…今の若者・子供と昔の人では、子供時代含め保有する写真枚数が二桁違うだろう。
今の赤ちゃんや子供は、親世代の写真や動画を取る熱心さが異常なほど高まっているし、ちょっと見栄えの良い子供だと芸能人ばりの写真動画が残されていたりする。今30~50代の人になると子供時代に何百枚も親から写真を撮られて動画を撮影された人なんてほとんどいなかったはず、広義のセルフィー文化は親も加熱させる。
写真・動画に自分や家族、友達、恋人などを収めて、それらを不特定多数に公開して何らかの自己愛的な満足・快楽・納得を得たいという現代のスマホとSNSの記録・公開の文化が、現代人の行動様式・自意識・価値観に与える影響は潜在的に小さくないものがあるはずで、イベントごとや観光旅行などの需要も刺激している。
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