○終身雇用に近い職場にいて途中で辞めない労働意欲を維持しないと、過半は結婚・育児のコストを安定的に稼ぎ続けられない現実があり実家頼みも多い。稼げない自営業は半分趣味だが、だからこそ雇われる勤め人への再適応が壁になる。
お金を増やすことだけを第一の目的にして他の全てを捨てて働ける人は資本主義では困窮しないという話を書いたが、結婚や出産・育児を選択して決断するなら自営業・自由業・趣味人に限らず『稼げなくなったら素早く稼げる仕事・お金第一にシフトする覚悟』がないと生活がいきづまる、それが嫌ならやめておくべきだろう。
そもそも論として、現代では大半の人は企業に雇われないと世帯をもって自立するだけのまともな金額は稼げない。自営の飲食業は波が激しくいったん右肩下がりの経営になると自力で挽回して再成長できる人は殆どいない。30年、40年と続けていける仕事でもない。親世代より子世代は平均して稼げなくなってはいるが。
一方、日本の金融資産の50%以上は60代以上の層が保有、20~30代はほとんど金融資産がなく、家庭があると毎月の給料がその月の生活費でほぼ消える家計簿になる余裕のない層が多い。もう一つは現代人はハングリー精神に根ざした労働意欲が昔の人(子供時代から貧乏に喘いでお金への渇望が強い)より弱まっている。
しかし何が何でも必要なお金を稼ぐというハングリー精神がないと、一定以上のお金が長期にかかる結婚・子育ての生活は成り立たず、『稼げなくても自営業を続ける選択』はジリ貧か最悪の結果になる恐れもある。親世代が十分な資産・ビジネスを持っていれば別だが、日本の世代別の所得・税負担率はジリ貧傾向にある。
昭和50年代頃までの最大の違いは実家が貧乏か中流か親が支配的か否かで、昭和中期までは貧しい田舎の農村漁村の出身者が多く父の家長権も強かったから、『お金が欲しい・都会で暮らしたい(田舎に何もない)・好きな人と結婚したい・親から自由になりたい』等のハングリー精神が激務型終身雇用に食い込む労働意欲を支えた。
現代は過去の成育環境とは反対で、中国の小皇帝ではないが多くの人が『豊かな子供時代・親が優しくて友達的な関係・漫画やネット、ゲームなど娯楽も多い環境』で成長しているから、『大人になって自立して得られる生活上の楽しみ』が減りやすい。昔は恋愛・男女関係が自立と一人暮らしの楽しみだったがそれも低調という。
孫の世代以下は雇用・収入・税負担の問題が大きくなる可能性があり、豊かな時代の反動でハングリー精神低下も起こりやすくなるが、『時代が進むほど子世代が稼げるようになる近代のゴールデンエイジ(経済成長期・労働意欲充実期)終焉』に際して、親子間の経済負担や相互扶助のあり方は暫くは混乱するだろう。
○劉暁波は天安門事件と08憲章で中国共産党の独裁体制を批判した人物だが、獄死した事で『人民殺戮の天安門の歴史を抹消したい中共』に対する民主化運動のイコンとして人々の心に生き続ける事になる。
1989年の天安門事件の年は、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊した年でもあり、世界史の大激動による東西冷戦のゆらぎに乗じて、中国も共産党独裁の桎梏を打ち破ろうとしたが時期尚早ではあった。ソ連の影響力低下によって社会主義の独裁政権は次々ドミノで倒れたが、中国共産党は弱っていたわけではない。