宮城県石巻市の『水産業復興特区』でカキ出荷が始まる。東北被災地の水産業の再活性化を。

カキ(牡蠣)の養殖が盛んだった宮城県石巻市の養殖場・処理場は、東日本大震災の津波で壊滅的な打撃を受けたが、今年から地元漁協だけでなく民間企業も加わった『水産業復興特区』を中心にして、カキの出荷が本格化するという。

水産特区でカキ出荷始まる=全国初「想像以上の注文」-宮城・石巻

先日、ほっともっとで『カキ弁当の宣伝の幟』を見て、反射的に買ってしまったほどにカキが好きなのだが、残念ながら石巻市のカキの出荷は当面は県内のスーパー向けに限られるという。これからの季節は、リンガーハットのカキちゃんぽんとかカキを入れたチゲ鍋とかも美味しくなってくるが、鮮度が高い臭みのないカキはやはり生で食べるところに醍醐味がある(魚介類が当たりやすい人などは敬遠することも多いが)。

福岡市のオイスターバーでは福島第一原発事故の風評被害の影響もあってなのか、東北の三陸海岸で養殖された生牡蠣は広島県・富山県・大分県・北海道などの生牡蠣と比較して、約3割くらい安い値づけが為されていたが、元々はカキの最大の生産地である広島県と同格程度のブランド価値があったカキだけに、生産者の方は無念な思いもあると思う。

距離的に離れた岩手県の沿岸であっても、福島県沖の汚染水問題などの風評被害を完全に免れることは難しいことが『県外・全国への出荷の抑制』につながっているのか、ただ生産量が不足しているために全国出荷まではできない状態なのかは分からないが、放射性物質と絡む風評被害を『科学的・数値的な根拠』によって無くすこと、消費者の側も心証ではない数値的根拠を重視することが、東北地方東岸の水産業復興のためには必要だと思う。

個人的には安全性に科学的根拠における疑義がなければ、福島県産・岩手県産のカキでも問題なく食べるのだが、カキは海の掃除屋と呼ばれるように海水のミネラル分をフィルターとして濾過するような生態を持っているため、海水の汚染に関する不安感は高まりやすいという心理的要因も理解はできる。

民間業者も積極的にカキの養殖・販売事業に参加できるようになった水産業復興特区の利点を生かして、東北地方全体の水産業の再活性化に向かって欲しいと思うが、『第一次産業の株式会社化・効率的な大規模化』というのはTPP(環太平洋経済連携協定)と関係する農業の競争力強化でも大きな課題に上ってくる産業改革路線でもある。