ユニクロがアパレル世界4位へと躍進。ユニクロの機能性衣料の市場と経営・雇用の問題点。

ユニクロの四半期売上が初めて1兆円を突破して、ZARA、H&M、ギャップに続く世界4位のアパレルチェーンになりそうである。

ユニクロは上位3社と比較すると『ファストファッション』というよりは、ヒートテックやウルトラライトダウンなどの『機能性衣料の開発』に力を入れているので、日本ほどそれらの機能性衣料のブランド名などが周知されていない外国市場においての潜在成長力があると見られている。

ユニクロ絶好調

ユニクロはとにかくオフショア(特に中国)で生産して安く売るという路線からビジネスを始めたが、2000年代半ばから『ファストファッションにおける質感・機能性』の商品開発にシフトして外国にも販売チャネルを拡大したことで、急速な成長を実現した。

最近は、ユニクロの国内での雇用システム(正社員の待遇)が、社員を酷使(搾取)して使い捨てにする『ブラック企業』ではないかという批判が起こったり、海外の生産拠点で安価な労働力を活用するグローバルなビジネスモデルがデフレ景気を長引かせて、国内の雇用を減らしているのではないかという不満もあるようだ。

だが、ユニクロに限らず巨大化したグローバルネットワークを持つ企業は、どこも似たような『生産コストの削減・販売チャネルの拡大』に頼るビジネスモデルに行き着くことになるし、ユニクロが国内ですべての衣料を生産したり、競争原理を緩和した社員の終身雇用を約束すれば、既存の店舗・雇用を喪失するだけの結果に終わるだろう。

ユニクロのブラック企業批判は、新卒採用の正社員(3年後離職率が極めて高い)に向けられたものでアルバイトの待遇が特別に悪いわけではなく、他のアパレル企業と比べれば給与・福利厚生も悪くはないが、結局、店長以上のマネージメントクラスにまで昇進する能力・体力・意欲がない人材は、長く会社に留まることができないような競争原理・幹部教育(語学研修など含め)の厳しいシステムを採用していることが非難されているようだ。

そういった離職率の高さや過酷な長時間勤務の非難を受けて地域限定・店長固定といった限定正社員の雇用形態も準備しているとは聞くが、ユニクロで長期的なキャリアやグローバルに活躍できるポジションを形成して幹部職にまで昇進できるのはひと握りの人材で、そういった人材になる姿勢・意欲を示さないと会社に長く残りづらいカルチャーのようなものがある。

一般的にイメージされるユニクロの各地の店舗で店長クラスで勤めながら、それなりの給与でぼちぼち気張らずにやっていくというようなワークスタイルは基本的には認められておらず、50代以上の年代で何十年もその店舗にいる店長職の姿を見かけることなどもない。上流の幹部職や広域のマネージャー層については、新卒採用から叩き上げで育てているのではなく、戦略コンサルなどのグローバルエリートの人材を別枠でヘッドハントしているというような見方もある。

柳井正会長自身が超絶クラスの『終わりなき向上心・開拓者的な野心の塊のような人間』であるため、ぼちぼちとかそこそこ・現状維持とかの株主の期待にも反する発想を下の人間(バイト以外)には許さないのかもしれないが、『求めている人材のレベル・努力の強度』が新卒段階では曖昧に示されていることでギャップが大きくなるのだろうか。

自伝・論評などを読んでも、柳井正氏は人生の中で趣味でのんびりとかマイペースで焦らずとかで過ごした時間が極めて短いか、そういった時間がむしろ落ち着かないと感じる気質・性格(タイム・イズ・マネーの妥協なき実践者)のように思える。一代でユニクロブランドを世界に広めたという卓越した行動力のある経営者であることは確かだが、そのテンションや人生観にがっつり付いていけるような人もまた少ないのだろう。

ユニクロの日本国内でのブランドや商品の周知度の高さを考えると、国内での潜在成長率は余り残されていないようにも思うが、『顧客単価の緩やかな上昇』や『新規コンセプトの商品開発』が鍵になるだろう。980円の商品が多かった10年以上前と比較すると、ユニクロの商品単価は1.5倍以上にはなっているが、現状では4000~5000円前後にユニクロ商品のプライシングの限界があるようにも感じる。

ユニクロの生産コストのリスクはやはり『中国の人件費高騰・原油高による東南アジア(ベトナム、タイ、ミャンマーなど)からの輸送費上昇』などであるが、グローバルなサプライチェーンによる低価格路線はいずれは『労賃の平準化』で活用しづらくなってくるだろう。ユニクロの経営・雇用には幾つかの問題はあるが、『安価な機能性重視の衣料』というコンセプトは、海外の主要アパレルチェーンにはなかった発想である。

私はそれほどユニクロの服を頻繁に買うわけでもないのだが、スポーツウェアとカジュアルウェアの中間領域で普段着に使いやすい商品の路線での開発は期待したいし、ウルトラライトダウンのフィルパワーを上げた高品質バージョンみたいなものとかを作ってみても面白いと思う。