3Dプリンターは『趣味的なモノづくり・サービス』にも応用できるが、樹脂を主体とする素材と大量生産の速度の制限があるため、ビジネス分野のスケールメリットは『実物の試作品製造を代替するコスト削減』にある。
キヤノンは細部まで立体化されたVR(バーチャル・リアリティ)によって試作品を仮想体験できるヘッドマウント・ディスプレイを開発して、3Dプリンターよりも更に低コストな試作品の仮想体験を実現できたとしているが、こういった『モノを伴わない試作・試行錯誤』というものも新たな体験型サービスとしての価値を持ってきている。
3Dプリンターは樹脂製品・試作品の少量生産に適応した技術だが、剛性の高い試作品の大量生産にはやはり金型が必要ということで、パナソニックと松浦機械製作所が樹脂ではなく特殊な金属粉末で立体模型の金型を作れる『金属光造形金型』という新技術を開発して業界では注目されているようだ。
樹脂版3Dプリンターではない金属版3Dプリンターであるが、この技術は重厚長大産業の大量生産プロセスに転用可能であるため、現時点では『金属版3Dプリンター』そのものの商品化による売却はせず、設計図やオファーに応じて自社のプラント内だけで金属版3Dプリンターを稼働させるようなビジネスに特化するという。
自動車メーカーや重機メーカーの世界的な基幹技術になる可能性があり、巨額の利益を得られるチャンスでもあるので、『金属光造形金型の技術流出』には非常にセンシティブになっているが、コモディティ化する前にどれだけ市場を拡大して囲い込めるかが勝負どころになるし、近年は主力の電機事業部の低迷が著しいパナソニックとしては面白い分野への切り込みだと感じる。