“夫婦(カップル)はどうして顔が似ているのか?”と“顔が似ているか否かの判断基準”

男女のカップリングは社会経済的要因を過度に重要視しない人であれば、社会的バランス理論によって『外見的・性格的な魅力のバランスが取れた相手』を選びやすいとされるため、一般的に何となく『お似合い(似たような雰囲気)のカップル』に落ち着きやすい。

男女相互の魅力のバランスの基準には、『外見・性格・価値観において自分との類似性が高い相手』も含まれているが、厳密にどのくらいの割合のカップルが有意に顔(外見)が酷似しているのかまでを調べた研究はない。

社会的バランス理論でも『総合的な魅力のバランスや類似性』のほうが強く働くので、『顔だけの酷似』がどれくらいの頻度で発生するかははっきりしないし、『カップルを見る側の主観的な判断・印象』にも相当に大きく左右される。

「夫婦は顔が似てくる」は間違い!そっくりカップルが生まれる意外な真相

本当に『夫婦は顔が似ている(自分や親に顔が似ている相手を無意識で選ぶ人が多い)』のかは統計的な根拠が確実にあるとまでは言えず、大きな財産や権力、地位が関与しないカップリングのケースでは、『自分の外見の一般的な評価水準』は『相手の外見の一般的な評価水準』と概ね同じ程度であることが多いということまでしか言えないだろう。

『物凄く似ているように見える数組のカップル(テレビで見る有名人含め)を見た時のインパクト』が尾を引いていたり、『いつも仲良くしていて何となくぴったり噛み合った感じがある、雰囲気が似ているだけ』のカップルを似たもの夫婦と認識していることも有り得るからである。

夫婦(カップル)を見て似ているか似ていないかを判断する側の印象・基準・固定観念の影響も、おそらく思われている以上に大きいのではないかとも思う。元々、『人間の相貌認識(顔認識)の精度や仕組み』というのはかなりいい加減なものであり、ある顔と別の顔が似ているか似ていないかは『大まかな全体の印象・傾向・雰囲気』だけに依拠していたりする。

例えば、モノマネ芸人で顔真似をする人は、ちょっとした表情やメイクの変化だけで、一人で何十人もの芸能人(有名人)の顔を演じたりもするが、客観的な細部は全く似ていないのに(真似している芸能人同士も全く似ていないのに)、結構どの顔にも似ているように感じたりする。

もう一つは、AKB48や似たようなアイドル集団がみんな同じような顔に見えるとか、ジャニーズがみんな同じような顔に見えるとかいう人がいるように、『若い・可愛い・明るい・綺麗・かっこいい・背が高い・やせ型・おしゃれ・今風などのイメージ』に誘導されて顔を見てしまう人も結構いるということだ。

美男美女のカップルだったり、反対に余り冴えない印象のカップル(太っている人同士とかガリガリの人同士とか)だったりすると、それだけで(細かい顔の部分の類似度の検証は為されずに)『その二人は似ているはず』という風に固定観念で先回りした判断がなされやすいということもある。『明るい雰囲気』か『暗い雰囲気』かの第一印象だけでも、固定観念はかなり大きな影響を及ぼし、顔の輪郭線(丸いか尖っているか)が同じで明るくて饒舌という共通点だけでも『かなり似たカップル』に見えやすい。

人間の相貌認識(顔認識)はその程度にはいい加減な精度ではあり、『体型がやせ型(肥満型)・顔が細長型(丸型)・目が垂れ目(上がり目)・いつも同じ表情(一緒に笑っている場面ばかり見る)・肌や髪の色が同じ(色白同士)』だけでも、この二人はかなり似ていると感じやすく、こういった大まかな特徴の組み合わせはそんなに多くはないから、『ある程度まで似ているように感じる人』というのは意外にいる。

そして最大の要因は、『ある程度まで似ているように感じる人』が夫婦や恋人として周囲から認識されていたり、いつも一緒にいる場面(一緒に笑っていたり子供を可愛がっていたり)を見られたりすることであり、『二人一組の存在(運命共同体的な存在)』としてそのカップルを見ると、赤の他人である二人(相手を見ておらず知らんぷりしていて会話や表情の息が合っていない二人)よりも心理効果で似ているように感じやすいという影響も想定される。

“~さんの夫・妻・恋人”というように絶えず認識され続けること(学校・地域の行事などに二人揃っていつも顔を出したり息を合わせて行動すること)によっても、赤の他人よりかは何段階か顔・外見が似ているように見られてしまう可能性(赤の他人であれば似ているなどと言われないのに夫婦であることによって似ているように見られる可能性)は有意に高いのである。

また、親子・兄弟姉妹のようなレベルで『極端に似ている夫婦』に選択的に注意がいきやすいことで、『あまり似ていない夫婦(あるいは仲が悪くてあまり一緒にいなかったり夫婦のセットとして認識されにくい夫婦)』がある程度いても、そこに目線や関心が向かいにくいことで『似ている夫婦のほうが多い』という固定観念を導くこともある。

『年齢を重ねれば夫婦の顔が似てくるの説』は、この記事では間違った仮説として退けられているが、加齢現象は一般的に『男女の顔の性差(男らしい顔・女らしい顔の典型的特徴の差)』を縮める作用を及ぼす。70代以上くらいの高齢になると『おばあちゃんのように見える男性・おじいちゃんのように見える女性の比率』が若い人たちよりも高くなる(ぱっと一見しただけでは性別の違いが判別しにくい人たちが増え始める)が、そこまで高齢にならなくても結婚の初めから『大まかな特徴・雰囲気』が似ていれば、生活・食事・価値観の共有でその特徴が強調されやすくなる。

高齢になると『顔の特徴の性差』が縮まるという要因以外にも、『長期間にわたる家族共通の食生活・運動習慣などの影響』が『体型の類似性』になって現れやすくなるということもあるだろう。

第一印象で夫婦が似たような体型をしていることに加えて、長年一緒に連れ添っていて仲良しと見られていたり、行動・会話の息も合っているとなると、一般的には似たもの夫婦と判断されることになりやすい。反対に、『同じ夫婦』でも仲が悪かったり疎遠(ほとんど別行動)だったりして、二人一緒のイメージが弱ければ似たもの夫婦とは見られにくいかもしれない。