Yahoo!による約11億ドルの“Tumblr”の巨額買収。若手ギークのアメリカンドリーム。

Tumblr(タンブラー)は日本ではまだウェブのコアユーザーにしか使われていないマイクロブログ・サービスだが、世界では『本格的なブログ更新の労力・時間を惜しむ若年ユーザー層』を中心に大きなトラフィックを集めるようになっている。

Tumblrとは、情報収集能力やトピックの感度が高いユーザーをフォローすることによって、ウェブ上の多種多様なコンテンツを集めたり紹介したりすることができる『キュレーション』のWebサービスであり、自分自身でブログを書く用途には殆ど使われていない。

Tumblr
https://www.tumblr.com/

誰でも手軽に更新できるというか、『他のブログ記事』を簡単に引用して大勢と共有できるサービス(転載ではないかという著作権上の批判もあったが一応オリジナル記事のURLを表示してアクセスを還流させる形式)であり、簡単に言ってしまえば『Twitterのフォロー機能』をブログに拡大したサービスと言える。

Twitterの『リツイート(RT)』に当たる機能がTumblrの『リブログ』と呼ばれる機能なのだが、このリブログをオリジナルの次の段階で素早くできるユーザーが、“キュレーター(情報編集者・紹介者)”として大勢のフォローを集めるという仕組みになっている。

Tumblrはキュレーターを介して積み上げられていく『ウェブ上のスクラップブック』と理解することもできるが、『自分自身でオリジナルのコンテンツを作成(発信)する手間・時間』を省略しながら、読みたいコンテンツや紹介したいネタを詰め込むことができるという点に人気が集まっている。

Twitterでも著名人や興味のある人をフォローするだけで自分からは殆どつぶやかないユーザーは多いが、Tumblrはそれをより先鋭化したものでもあり、『多種多様な読みたいコンテンツ』をリブログしたり集めて紹介したりできる。

ブログやSNSを利用した一般ユーザーが『情報の発信者・他者との対話者(討論者)』になるというムーブメントは、“ブログ疲れ・SNS疲れ・ネタ切れ(気力切れ)”によって一息ついた観があり、『NAVERまとめ』や『2ちゃんねるのまとめ系サイト』、『はてなブックマーク』『BLOGOS』など、ただ効率的に集められたコンテンツを読むだけのスタイルが広がってきている。

Yahoo!の11億ドルのTumblr巨額買収はこの最近のウェブトレンドを読んだ動きであるが、Tumblrの創業者デビッド・カープ(26)は高校中退後にホームスクーリングで学びTumblrのサービスをスタートアップさせたが、このM&Aは日本ではあまり見られないタイプの分かりやすいアメリカンドリームである。

デビッド・カープは企業組織のリーダーシップを取るような積極的な性格でもなく、インドアなライフスタイルで質素にのんびり過ごすのが好きというような記事もあったが、Tumblr単独でのビジネスモデルの上限を考えれば、トレンドが味方した現時点で素早くバイアウトして、数億ドルの資産を築くというのは出口戦略としては相当な成功だろう。

Yahoo!はニュース要約アプリのSummlyも買収したが、若手起業家が開発したコンシューマーサイドのサービスの買収に力を入れている。

端的にポータルとして巨大化してキャッシュを持っているYahoo!の中期経営のネックが、ユーザー参加型のCGMやSNSにおいて目立った人気サービスを自前で立ちあげられなかったことにあるためだが、Tumblrはユーザーが自分にとって面白く感じる使い方を理解するまでの敷居が若干高く、ITに詳しくないマジョリティが利用するまで普及するかは微妙かもしれない。