映画『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』の感想

総合評価 83点/100点

事件の捜査能力とススキノでの人脈はあるが、女好きの俗物で自堕落なところもある探偵の“俺”(大泉洋)、空手の格闘技の達人でいつも飄々としてマイペースな助手の高田(松田龍平)が札幌の街で繰り広げるドタバタの探偵物語。

ススキノのショーパブ『トムボーイ・パーティ』に勤めるトランスジェンダー(オカマ)のマサコ(ゴリ)は、お客さんを魅了するマジックが得意でその腕を磨いている。テレビ局が主催するオカマの特技選手権で見事に優勝して一躍有名になったマサコをみんなが祝福してくれたが、間もなく撲殺死体となって発見されてしまう。

マサコと親しく付き合っていた探偵の“俺”は必死に捜査をするのだが、マサコの交友関係や性格・行動履歴からは、まったくマサコを殺そうとする怨恨・利害関係が浮かび上がってこずに手詰まりとなる。“俺”は捜査が進まない苛立ちもあってか、兼ねてからの女好きの病が発症してしまい、極上の女(麻美ゆま)にはまって毎晩セックスをし続ける依存症状態に陥る……(この辺は年齢制限があることもあり性的描写を結構大胆にしている)。

3ヶ月が経過してカネのない“俺”は、金持ちに乗り換えた極上の女から無惨に捨てられるが、その間に、ショーパブの仲間たちはマサコの事件に対して急にそっけなくなり誰もその話題に触れなくなっていた。『お前ら、冷たいじゃないか』と怒鳴る“俺”、『お前こそ3ヶ月も連絡なしでどこをほっつき歩いてたんだ』と返され、『いや重度の病気(女関係)にかかっていて……』と言葉を濁す“俺”というコミカルなやり取りがあったりもする。

助手の高田を呼びつけて本格的な捜査に乗り出していく“俺”だったが、マサコの部屋には生前にファンだったというバイオリニストの河島弓子(尾野真千子)のCDが大量にコレクションされており、周辺で河島弓子本人の姿がちらつきだす。マサコ殺人事件の背後には、札幌の選挙区で絶大な人気と影響力を誇る政治家の橡脇孝一郎(渡部篤郎)が絡んでいる、マサコと橡脇孝一郎が過去に交際していたという噂も流れ、政治家の圧力・排除がかかることを恐れた周囲の人たちはマサコについて口を噤んでいくようになる。

事件に深入りして真相を突き止めようとする“俺”とおとぼけキャラの高田の前に、マスク姿の暴漢集団の刺客が送り込まれてきて、何度も激しい乱闘や脱出劇となるが、『橡脇とマサコの交際関係と橡脇の考え』については依然曖昧なままで、本当の加害者が誰なのかなかなか特定できない。高田の運転する型落ちしまくりの愛車は相変わらずオンボロでいつも肝心な場面でエンストをしまくる。今回は遂に車が爆発してエンジンが壊れ、『これでこの車も終わりだな、さっさと買い換えろ』と“俺”は憤慨するのだが、エンディングに出てくるその買い換えた車も……である。

バイオリニストの河島弓子も“俺”に接近してきて、一緒に暇つぶしも兼ねてマサコ殺害の犯人を探したいと申し出てくるのだが、弓子はバイオリニストとしての自分の才能に限界を感じて、もう辞めようかと悩み続けてもいた。

橡脇孝一郎本人との面会(マサコに対する思いの述懐)、マサコが隠し続けてきた過去とそれに関係した弓子とのつながり、オカマのマサコに向けられた意外な方向からの悪意・差別意識(やっかみ)という構造が暴かれるに従って、ぼやけていた真犯人の輪郭が次第にはっきりしてくるサスペンス形式のストーリーの流れになっている。