映画『テルマエ・ロマエ2』の感想

総合評価 79点/100点

古代ローマの公衆浴場(テルマエ)から現代日本の風呂(温泉・銭湯・家の風呂)にタイムスリップして、様々な技術やサービス、アイデアを古代ローマに持ち帰って実用化していく浴場設計技師のルシウス・モデストゥス(阿部寛)の歴史を飛び越えた活躍を、異文化(異時代)コミュニケーションの笑いを通して描く『テルマエ・ロマエ』の第二作。

ルシウスのことが好きでラテン語まで独学した山越真美(上戸彩)との随所での再会や古代ローマの歴史を事前に知っている真美の協力などもサイドストーリーとして展開していく。今回は、ローマ帝国の闘技場(コロッセウム)で戦っているグラディエイター達を癒す風呂づくりの仕事がルシウスに依頼される。日本にタイムスリップしたルシウスは相撲を取る力士たちを見て、その殺し合いにまで発展しない平和な戦いぶりと番狂わせに怒った観衆たちが投げ込む柔らかい座布団に感嘆する。

ルシウスと平和主義者の皇帝ハドリアヌス(市村正親)は『コロッセウムのグラディエーターの死闘』を、ローマ市民の戦闘欲求を刺激する残酷なサーカス(見世物)として批判し、できればやめさせたいと考えていた。だが、元老院議員たちはパンとサーカスこそが、『ローマ市民の好戦的な熱狂』というローマ帝国拡大の原動力になっているとして、コロッセウムの死闘を積極的に奨励していた。

ルシウスは巨漢の力士たちが入浴している風呂を見て、足つぼマッサージや電動マッサージ器、バスクリンの入浴剤などの効果効能に感動し、古代ローマの時代に戻ってからは、奴隷が人力でマッサージをする機械や薬草を混ぜ合わせた入浴剤などを発明して利用した。力士役には、往年の横綱の曙、大関の琴欧州などが出演したりしているが、力士に囲まれたルシウスは日本の風呂の道具や入浴法に感嘆し、ローマ人よりも劣っていると認識する『平たい顔族』の力士に笑われることを不快に思っている。

死闘の試合に納得できないローマ市民たちがコロッセウムに投げ込む『石』も『座布団』に変更させて、投げ込まれる石によって怪我をするグラディエーターや市民が出ないように工夫されることになった。

グラディエーターを癒す風呂に続く課題は、ローマよりも気候が寒冷なパンノニア属州に遠征している次期皇帝のケイオニウス(北村一輝)たちの軍団を癒すための風呂づくりであった。パンノニアまでは相当な距離があるため、大理石の風呂を運搬することは不可能だったが、再び日本の山中にタイムスリップしたルシウスは、山奥で手製の樽風呂に浸かるおじいちゃんを見て、容易に分解して運搬することが可能な『木の風呂(樽風呂)』のアイデアを得ることになる。

平和主義路線のハドリアヌス帝と帝国主義路線の元老院議員との対立図式を前提にしたストーリーだが、元老院議員は次期皇帝ケイオニウスと瓜二つの外見を持つ兄ジェイオニウス(好戦的な帝国主義路線の賛同者)を擁立して、結核で衰弱しているケイオニウスの代わりに皇帝に立てようとしている。

ルシウスと真実はコロッセウムでジェイオニウスが偽物であることを見破って暴露しようとするが、真実が現代日本から持ってきていた歴史書『ローマ帝国の繁栄と滅亡』のタイトルを見たジェイオニウスから、ローマ滅亡を願って呪詛する魔女だと告発されて逮捕されてしまう。最終的には、本物のケイオニウスとハドリアヌス帝が駆けつけてきて、ジェイオニウスのほうが捕縛されることになるが、徹底した女好きのキャラとして描かれるケイオニウスがルシウスに託す遺言など笑える箇所も色々と作っている。

ルシウスのテルマエ設計の大目標は、バイアエに巨大な温泉保養地を建設することであったが、この温泉建設を『草津の温泉街』をモチーフにして進めていくことになる。ルシウスは究極の平和を象徴した温泉の形態として、男女が共に欲情に流されることもなく穏やかな会話を交わしながらお湯に浸かっている『混浴』に驚嘆させられるが、古代ローマでの混浴の復活は『かつてのローマの公衆浴場における風紀紊乱』を心配するハドリアヌス帝によって却下されてしまった。

バイアエの温泉街『湯ートピア』を完成させたルシウスは、更に皇帝に命令を受けて北方の異国の地でのテルマエ建設事業に取り掛かろうとするが、真美の所持する歴史書には『北方のテルマエ建造中に落盤事故でルシウスが死亡する』という不吉なエピソードが記されていた。しかし、ルシウスはテルマエ建設という自らの天職に携わりながら死ぬことになるのであれば悔いなどないとして、北方の建設予定地へと旅立っていく。

第一作と比較すると古代ローマ帝国の内部対立の危機など、コミカルな風呂のアイデア以外の真面目なストーリーが占める部分も多くなっているが、力士の集団や『与作』が好きな田舎のおじいさん、草津の温泉街でのやり取りなどでコメディ映画としてのポイントは抑えている。

しかし、風呂やトイレなどの現代の便利な技術・設備・サービスにルシウスが驚いて、『検討違いな技術の仕組みの推測』をするというのが笑いの要素になっているので、続編を作るとなると『トイレタリー分野での驚きのポイント』がかなり出尽くしてしまっているのでなかなか難しいかも。