増加を続ける認知症の行方不明者に対して身元確認を強化:超高齢化社会における認知症と脳機能の低下

65歳以上の高齢者で認知症の人は、全体の約15%で2012年時点でも約462万と推計されているが、早期アルツハイマー等を含めれば現在は500万人を超えていそうだ。単身高齢者の認知症では身元確認も難しい。

<認知症不明者>確認強化 照会項目増やし…警察庁通達

認知症者が500万人といえば相当な数で、政令指定都市をいくつも合わせたような巨大な人口を構成するボリュームである。約25人に1人が認知症の高齢者と考えると、日本の超高齢化社会の深刻さを感じるが、今後この割合が高くなることはあれど低くなることはない現実に個人・行政・福祉制度がどう向き合っていくべきか。

認知症は健康と病気が明確に区別されるタイプの『疾患単位』ではなく、健康と病気の間に無数のグラデーション(段階)を想定できる『脳の老化の進行度合い』といった見方も強く、中高年期になると認知症の診断を受けていなくても、記憶・判断・思考・言語といった脳機能は個人差がありながらも多少は低下してくる。

脳梗塞・脳出血によって起こる『脳血管性認知症』は、血管障害に付随して起こる病気としての認知症の側面も強いが、アミロイドβという特殊なタンパク質が蓄積して脳の萎縮が進んでいく『アルツハイマー型認知症』は、個人差のある脳の老化(脳の器質的な弱さ)という側面も強い。

認知症は自分自身の問題というよりも、周囲で介護・ケア・会話をする人たちの問題という部分も大きいが、認知症の初期段階で『自分の存在・意志を認めてくれる家族や周囲の人たちの話しかけ(意図を読み取ろうとする粘り強い態度)』があったほうが進行度合いが遅くなるという研究結果もある。

同じ認知症でも、穏やかさ・柔和さ・従順さが強調されるタイプの認知症であれば可愛らしさもあり、周囲の家族や介護者も好意的に接しやすいのだが、性格の悪い部分やきつい部分が強調されるタイプの認知症だと周囲のストレス・疲労度が限界に達しやすくなる。認知症・寝たきりは今後の高齢化社会・社会保障の大きな課題。