虐待致死・ネグレクト事件では『子供のいる部屋』を粘着テープで貼り付けドアを開かなくしている事例があるが、『子供の行動の抑制』と『子供を視界に入れない現実逃避』の動機によるとされる。
この事件で母親が家を出た理由は、被告のDV(配偶者間暴力)にあったとされるが、『妻に対する暴力』があって『子供に対する暴力・ネグレクト』がないと考えるほうが非合理的である。夫に対する恐怖心・会いたくない思いがあったとしても、家出後のフォロー・子供の安全確認を児童相談所に依頼する等の配慮があれば。
自分一人で責任を持って愛情を注いで子供を育てられるような男であれば、妻に対してDVを行うこと自体が有り得ないわけで。健全なパーソナリティや責任感・親子観を持つ母親でもシングルマザーで子育てするのはとても大変で苦労が多い事、『自分の都合・子育て以外のやりたい事のほぼすべて』を捨てないと無理な事である。
父親が子供を一人で育てるまでの履歴や性格、行動パターンなどを見れば、『シングルファザーで育児を遂行できる資質・意欲・能力』が備わっているとも言い難いので、母親が関連機関や夫方の両親に相談するか、父親自らが生活・親子関係の現状を話して養育し続ける自信がないのでどうしたら良いかを児相に相談すべきだった。
基本的には、夫婦双方が実家とのつながりが既にない可能性もあり、祖父母の孫の成長に対する関心もないことから、母親がいなくなれば『父と子だけの密室環境』が継続してしまう状況だった。子供が餓死する前に衰弱している姿を父親は見たというがその時点で自首も兼ね警察・救急に通報していれば命は助かったかもしれない。
起きてしまった現実を視界にさえ入れなければ、『初めから起こらなかったこと(無かったこと)』にできるというのは、嫌な出来事から逃げて布団にくるまっている子供のような態度だが、残念ながら『生まれてしまった生命(養育責任のある子供)』に対しては見ないこと(無視すること)は何の解決策にもならない。