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“ネット・読書・映画”をはじめとする頭を使うインドアな活動も好きですが、“登山・ランニング・ロングトレイル”といった身体を使うアウトドアの活動も好きです。 『社会科学・人文学』の知見をベースにしてますが、世の中や人間、精神、自然、ビジネスに対する興味関心をあれこれ満たせるようなコンテンツをちょこちょこと書いていきます。 毎日を楽しく有意義に過ごすための『楽観主義(オプティミズム)』と悲観主義に陥らない程度にリスクに備える『現実主義(リアリズム)』とのバランスを取っていきたいなと思っています。

所得税の個人課税から世帯課税への転換・配偶者控除の廃止の検討

安倍政権が所得税の税制改革で、課税単位を『個人』から『世帯(夫婦+働いている子など)』に転換したり、『子の扶養控除の積み増し』を検討しているという。女性の社会進出や就労率の向上が目的とされているが、累進課税制の所得税では『夫婦の所得合算に対する課税』は個人で納税する時の税率よりも税率が上がり、『実質の増税』になる可能性が高い。

195万円以下の所得に対する所得税は5%であり、個人単位なら課税所得が180万円同士の夫婦なら各自5%の所得税(合計18万円)だけで済むが、世帯単位で合算するなら年収360万となり20%の税率が適用されること(72万‐控除の427500=合計292500円)にまで増税されてしまう恐れがある。

また、従来は主婦や学生が単発のアルバイト(お小遣い稼ぎ)を繰り返しても年収38万円以下なら申告義務がなく無税であるが、世帯単位になると38万円以下(給与所得者の20万円以下)の小さな収入でも合算されて課税され税率が上がる可能性も出てくる。夫が年収400万だとしたら、世帯収入が438万とみなされるかどうかは分からないが(納税義務が生じる最低所得金額は個別に38万円で据え置かれる可能性もある)。

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予算(お金)はあっても使い切れない、仕事はあっても雇い切れない。

更に、モノはあっても売り切れない。これらは日本が直面している『豊かさの中の貧困・近未来の人材不足(人口減少)・価格競争(ダンピング)と平均所得の下落(中流崩壊)・仕事と消費の選好(選り好み)の強さ』を予見する現象である。

行政は収税と公的事業に『一切の無駄がないという建前・予算を減額する余地がないという組織の論理』によって、予算を使い切ることに対する半ば強迫的な義務感を持つことが常であり、予算が余って積み上がっていくことはなかなかなく何らかの公的事業・インフラ整備・備品購入などで調整される。

使い切れぬ復興予算 事業進まず基金化3兆円 被災3県

だが、岩手、宮城、福島の3県と各市町村の『震災復興事業』では市町村の復興ビジョンやそのための具体的な工程表・仕事の割り当ては描けていても、その実務を担って必要な予算を使う職員と労働者の絶対数が不足しているため、復興基金のお金だけが積み上がっていく。

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STAP細胞の追試不調と科学的研究の再現性:小保方晴子さんの論文の不備とは別に“STAP細胞”は本当に作製されたのだろうか?

STAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells:刺激惹起性多能性獲得細胞)は、その作製方法と多能化が実証されれば、細胞生物学の既存の前提を覆して、iPS細胞よりも作製効率が良く応用範囲の広い万能細胞につながる世紀の発見となる。

だが、『Nature』掲載後に、他の科学者が同じ手順で実施した追試では、STAP細胞の作製に成功する実証事例がまだでていない。そのことから、STAP細胞の実在を疑う声が出始め、論文に掲載されたSTAP細胞の分化の瞬間の写真が、過去の小保方氏の博士論文に使われていた写真の使い回しだったことも明らかとなった。

過去に書かれた論文についても、写真の使い回しについては、ハーバード大の共同研究者であるチャールズ・バカンティ氏は、注意不足による単純ミスで研究の結果そのものに影響はないと自己弁護したが、その後も『過去の写真』に変わるべき『現在のSTAP細胞の分化の写真』は再提示はされていない。

共同研究者の若山照彦氏(山梨大学)が『小保方氏のいない実験室ではSTAP細胞の作製が一度も再現できない(細かな作製手順のコツの指導は小保方氏から十分に受けている)・STAP細胞の存在に確信が持てなくなったため論文の撤回をすべきではないか』といった自らの研究結果に対する自信を喪失したような発言をしだしたことから、STAP細胞作製の研究計画そのものの杜撰さや結果の確認の不手際(本当にSTAP細胞へと変質したのかの確認の不十分さ)、科学論文の構成・証拠の不備が強調される形となった。

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映画『キックアス ジャスティス・フォーエバー』の感想

総合評価 88点/100点

『キックアス』の基本路線はポップでコミカルなアメリカンヒーローものだが、映像表現そのものは結構グロテスクな流血やハードな殺陣を伴っていて、アクション映画としての見所も多くある。会話の中ではスラングや猥語が次々飛び交い、ふざけた敵役のボスは口うるさい自分の母親を偶発的に殺してしまったことから、“マザーファッカー”を自称して暴れまわる。

勧善懲悪のアメリカンヒーローの代表であるバットマンやスーパーマン、スパイダーマン、アイアンマンなどには『財力・特殊能力・宇宙人・身体改造』など普通の人間にはない特別な強み(力の源泉)があるが、キックアス(アーロン・テイラー=ジョンソン)には『正義心・勇気』以外の何もなく、おまけに自前の緑ベースの衣装もセンスがなくてださい。

キックアスは悪事をしている奴らを見逃してきた自分が許せないという動機から始まったオタク系の『なりきりヒーロー』だが、特別に身体を鍛えているわけでもなく格闘技や暗殺術の達人でもないため、犯罪者とぐだぐだな殴り合いになった挙句に負けてしまったりもする。キックアスはSNSのコミュニティを通じて、自分と一緒に自警活動をしてくれるヒーローを募集しているのだが、強い者も弱い者もごちゃ混ぜになった同好の士が集まって『ジャスティス・フォーエバー』という自警集団を結成する。

ちなみに現代のアメリカの州では、当然ながら一般市民の自警活動(実力行使・徒党で威嚇する警察代替行為)は違法行為であり、『キックアス』でも仲間のヒットガールがキックアスを助けるために敵を殺してしまったことで、警察による自警活動(ジャスティス・フォーエバーのような自警団)の摘発が激化していったりもする。

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北陸道バス事故:長距離夜行バスの低価格・労働実態・リスク

バスの車体が防音壁に衝突して真っ二つに割けるような関越道の高速バス事故が発生したことで、『長距離高速バスの規制強化』が行われたが、それでも今回のようなバス事故(予測困難な居眠り・発病・発作などによるバス事故)を完全に防ぐことはできないだろう。

大型二種免許を所持する運転手が運転するバスもまた自動車の一種であり、人間が運転する自動車の事故がゼロには決してならないように、バスの事故も『運転ミス・貰い事故(他車の衝突)・体調悪化・発病や発作・睡眠不足・整備不良(部品劣化)・運転手の過労状態』などの各種のリスク要因によって引き起こされる確率がある。

公共交通手段の安全性の高さは、『航空機・鉄道(JRなどの列車)・バスやタクシー(自動車)』の順番で低くなるが、長距離夜行バスは何といってもその低価格が人気となっており、同じ距離を飛行機や新幹線で移動するよりも半額以下の価格で行くことができる。安全性の高低は、一般道を走る路線バスやタクシーなどでは殆ど意識する必要はないと思うし、実際に一般道の路線バスの死亡事故(怪我するような事故は稀にあるが)というのは滅多に起こらない。

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千葉県柏市の通り魔事件と不特定多数(誰でもいい相手)に危害を加えようとする犯罪類型

ニュース映像にあった現場の大量の血溜まりから犯行の悲惨さが伺われるが、カネ目当ての『強盗殺人』というよりは、精神状態の異常な興奮や攻撃性に基づく『無差別殺傷』に近いような印象を受ける。

31歳会社員の生命が失われる被害があったが、人通りの少ない深夜の住宅街の道路でなければ、より被害者数が拡大していた恐れもある。最初に声を掛けられた自転車の20代男性は、即座に逃げるという咄嗟の判断によって助かった(切りつけられて軽傷を負ってはいる)というが、その後の殺害状況から明確かつ強力な殺意の存在がうかがわれることから、加害者に言われるままについていけば不意の一撃で命を落としていた恐れもある。

加害者がいまだに捕まらず逃走を続けていることは、周辺住民にとっては非常な不安・脅威でもあるが、『公開されている外見・服装の特徴(サングラス・ニット帽・マスク・黒のダウン)』は、少しでも時間が経てば、全く犯人追跡の役には立たないものばかりである。

コンビニの防犯カメラに犯人の姿が映っていたとされるが、サングラスとマスクをしたままだと顔は分からない。それ以外の防犯カメラとの照合で逃走経路をつないでいったり、盗んだ車を乗り捨てた後の目撃証言がでるか、容疑者の周辺からの情報提供がないと逮捕まで漕ぎ着きにくいと思うが、新たな通り魔事件を犯す前の時点での検挙が至上命題ではある。

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