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“ネット・読書・映画”をはじめとする頭を使うインドアな活動も好きですが、“登山・ランニング・ロングトレイル”といった身体を使うアウトドアの活動も好きです。 『社会科学・人文学』の知見をベースにしてますが、世の中や人間、精神、自然、ビジネスに対する興味関心をあれこれ満たせるようなコンテンツをちょこちょこと書いていきます。 毎日を楽しく有意義に過ごすための『楽観主義(オプティミズム)』と悲観主義に陥らない程度にリスクに備える『現実主義(リアリズム)』とのバランスを取っていきたいなと思っています。

NTT東の社員の収賄事件と公共性の高い倒産のない企業・組織や人材の腐敗の問題

NTT社員の収賄事件に限らず、歴史的な大資本や暗黙の政府保証(国営・国策企業の出自)を背景にして『仕事を発注するサイド(その発注の金額設定や可否の権限を持つポジション)』に立つ人材は、“組織の影響力”を“自分個人の権力”であるかのように勘違いすることも多いといえば多いわけで、そういった権限・職位の私物化によって『贈収賄の効果及び動機づけ』は生み出されている。

NTT東社員、数千万円収賄の疑い 契約発注の見返りで

間接的な贈収賄と見られても仕方がないような過剰な接待営業(決裁者へのご機嫌取り)の歴史が、『正当な競争入札(不正のない価格競争)・サービスや商品の本来の魅力(契約の合理的理由づけ)』を阻害して、人的なコネクション(義理)や見返りとしての個人レベルでの便益の供与(贈賄)を『営業の本道』であるように錯誤させてきた負の影響は大きい。

数千万円程度を供与して数十億円の仕事が代わりに取れるのであれば、それくらいの贈賄は投資対効果では全く惜しくもないが、商品・サービス・価格・技術・プレゼンで競い合うべき市場原理が歪ませられて、『既得権益者間のみの契約による経済活動の固定化』が起こってしまう。

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コンゴの日本大使館放火事件と外交官の2200万円以上の横領疑惑

在外勤務の外交官は国家公務員の中でも難易度の高いエリート路線であり、パーティーや住宅費用の負担、現地での調査活動など公金を用いることのできる恩恵の割合は大きい。

だが、職務の使命感や外交感覚、リサーチ意識(赴任地域への関心)の低い外交官にとって『アフリカ・アジア・南米等の途上国勤務』は、倦怠感・無気力とその反動としての特権意識に襲われやすい問題を孕んでおり、合法的な会計処理であっても相当な無駄遣いが含まれる事が会計検査院の調査で指摘されたりもする。

公金どこに、建物含め被害億単位=現地でカジノ? 同僚に借金も-コンゴ大使館放火

30歳の容疑者は自分自身に掛けられた『横領罪・現住建造物等放火罪』の容疑を否認しているが、放火現場の監視カメラの映像や目撃証言、口座の入出金の履歴を調べられて容疑を固められているので、無罪放免とは行かないだろう。

カジノ通いやギャンブルの嗜好、周囲の同僚からの借金に加えて、金庫にあるはずの現金2200万円が消失しているなどの状況証拠もあり、会計の責任者であった容疑者が使い込んでいないという現金の存在を立証できない限りは、嫌疑を払拭することができない。

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ヨゼフ・シュンペーターの『経済発展の理論』とイノベーション

経済活動や社会生活、インターネット(IT)の分野で、『イノベーション(innovation)』という言葉が頻繁に使われだして10年以上の歳月が流れたが、現在でも企業や技術者、研究者はイノベーションを巡って鎬を削る競争を繰り返し続ける。

イノベーションという概念を提起したのは、オーストリア出身のヨゼフ・シュンペーターという経済学者で、J.シュンペーターは『経済発展の理論(1912年)』において経済成長の主要原因がイノベーションなのだと定義した。

シュンペーターのいうイノベーションは『技術革新』という風に一義的に翻訳できるものではなく、以下の5つの類型にまたがる『既存の知識・技術・組織の組み合わせの変化による新結合・便益増加・新たな生活文化様式』のすべてを包摂するものだった。

1.消費者にまだ知られていなかった新しい財貨(商品・サービス)の生産と提供。

2.効率的・科学的な競争力のある新しい生産方法の導入。

3.新しい販売先・顧客層の開拓。

4.新しい原料や組立の仕入れ先(委託先)の獲得。

5.新しい機能的な組織の創設(組織の硬直性・官僚主義・守備性の打破による突出)。

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“3Dプリンター・立体的VR”による試作コストの削減

3Dプリンターは『趣味的なモノづくり・サービス』にも応用できるが、樹脂を主体とする素材と大量生産の速度の制限があるため、ビジネス分野のスケールメリットは『実物の試作品製造を代替するコスト削減』にある。

キヤノンは細部まで立体化されたVR(バーチャル・リアリティ)によって試作品を仮想体験できるヘッドマウント・ディスプレイを開発して、3Dプリンターよりも更に低コストな試作品の仮想体験を実現できたとしているが、こういった『モノを伴わない試作・試行錯誤』というものも新たな体験型サービスとしての価値を持ってきている。

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ウェブ社会の進展とスマホ市場の拡大2:サムスンとAppleの世界市場の二強を揺らがすコモディティ化とローカル主義

ここ数年で驚異的な市場成長を遂げたものとしてスマートフォンがあり、スマホ市場は1年で2倍近くにまで拡大し続ける魅力的な市場だが、『スマホの販売単価下落』によって途上国のマイナー企業にも海賊ものも含めてチャンスが生まれているという。サムスンとAppleがスマホの世界市場の二強であるが、スマホ市場は先進国で概ね飽和しつつあり、ハイエンドの高機能・高価格なスマホの売上が鈍化しているため、今以上の成長を続けようとすれば『新興国・途上国で売れる格安端末』に手をつけるしかない。

ウェブ社会の進展とスマホ市場の拡大1:ウェブ社会がもたらした経済社会・ライフスタイル・時間感覚の変化

iPhoneやGalaxySのシリーズは先進国では売れているが、800ドル以上はする価格設定では途上国では買うことのできる層が極めて小さくなってしまい、中国のXiaomi(小米)やインドのマイクロマックスなどに顧客を先に奪われてしまうのである。そういった国ではブランド価値だとか先端的な機能だとかRetinaディスプレイだとかいったものは大した訴求力を持たず、価格が数百ドルもすると聞いただけでもう自分たちには買えない商品だと即座に判断されてしまうため、『100ドル以下』くらいにまで価格を引き下げないと売れない。

100ドル以下の格安スマホを、極端に企業ブランドのイメージを崩さない水準の商品で作ろうとしたら、確実に原価割れを起こして売れば売るほど損をするような格好になってしまうが、サムスンにせよAppleにせよ『ケータイ端末市場のドッグイアー競争』の歴史の上に君臨した企業であるが故に、価格破壊競争を無視すればノキアやRIM、HTCのように斜陽期にはまり込むのではないかという懸念は強い。世界最高の携帯電話メーカーとして10年近くもトップを走ったノキアが、スマホ時代に全く適応できずにわずか数年で世界シェアの大半を喪失した記憶は新しく、ノキアは日本をはじめとするアジア市場でも全く存在感を示せないままである。

サムスンもAppleも最終利益が少しずつ目減りし始めており、市場はその成長限界点を見極めようとして売りの姿勢を見せたりもしているが、『スマートフォン・タブレットのコモディティ化』がより進むことによって、日本の電機メーカーが『液晶テレビのコモディティ化』によって一気に世界市場でその存在感を失ったような出来事が繰り返される可能性もある。コモディティ化とは『メーカーごとの商品の個性や差異の喪失』を前提として、技術的な参入障壁が下がり価格・利益率も下がっていくという汎用品化の現象(特別な商品やブランドではなくなっていくこと)のことである。

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ウェブ社会の進展とスマホ市場の拡大1:ウェブ社会がもたらした経済社会・ライフスタイル・時間感覚の変化

1995年からインターネット時代が到来したとされるが、2010年からはデバイスがパソコンからタブレットやスマートフォンに転換されるようになり、より様々な年代・属性・地域の人がインターネットにアプリを介してアクセスする『本格的なネット時代(ウェブ社会)』が幕を開けた。

寸断されない分散ネットワークの軍事技術から転用されたインターネット(WWW)は、産業革命クラスのイノベーションであり、人々のライフスタイルや情報環境、価値観に非常に大きな影響を与えたが、産業革命との最大の違いは『経済成長・雇用増大・所得増加のインパクトが弱い情報革命(コミュニケーションと情報を巡る精神活動・人間関係に影響が大きくでた革命)』という点にあった。

インターネットは効率化・合理化を急速に推し進めて生産性・利益率を高めたが、その多くは『人的労働力を必要としない生産性の向上』であり、ITSの技術革新はそれに追いつくことのできない大多数の潜在的な労働力を置き去りにしてしまっただけでなく、『従来の仕事の単価』をアウトソーシングとクラウドソーシング(ウェブ上におけるタスクごとの個別契約)が大きく引き下げた。

更には、ウェブ上にアップされ続ける『膨大無数なコンテンツ+物理的制約を超えたコミュニケーション機会』が、お金のかからない“フリー経済”の領域を拡大して、プロバイダ(キャリア)の固定費さえ払えば終わりなく情報・コミュニケーション・ゲームの娯楽を享受し続けられる特殊な非物理的環境を整えた。

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