「コミュニケーション」カテゴリーアーカイブ

『ご苦労さん』の言葉遣いでキレた事件から考える中高年期の精神的危機(アイデンティティ・クライシス)

自分の精神状態が安定し他者との敵対的なフレーム(優劣の構え)がなければ、言葉遣い云々で激怒する人は殆どいないが、40代中年期は境遇によって自己定義が揺らぐ世代でもある。

「ご苦労さん」は失礼なあいさつなのか? 大阪知事選の投票所で47歳会社員が激怒

40代は順境にあれば人生の収穫期になることも多いが、仕事・経済でも家族面でも異性面でも、ゼロからの立て直しができないと自覚せざるを得ない斜陽感の生じる年代で、なまじ自意識の強い人が挫折感・不遇感を感じている場合には孔子の説いた『人知らずして慍みず、また君子ならずや』の道から遠ざかって殺伐としやすい。

『論語 学而篇』で最も知られるこの言葉は、中学の国語で習う定型句だが『学びて時に之を習う、また説ばしからずや…人知らずして慍みず、また君子ならずや』が実感として滲みやすいのが中年後期だろう。我こそはの自負心の強かった孔子が人に知られない挫折を悟った時、人を恨まずに天命に生きる為の自戒でもあった。

続きを読む 『ご苦労さん』の言葉遣いでキレた事件から考える中高年期の精神的危機(アイデンティティ・クライシス)

『いじめ問題』に対する対処法:世界一有名な町工場のおじさん・植松努氏の経験談より考察

リアルないじめ、シリアスないじめに対する実効性は弱いかもしれない。『近寄りたければ近寄る、関わりたくなければ距離を置く』は、相手をどうとでも制御できる強者の戦略だ。『嫌がっている人に近寄って力関係を強いる』のがいじめの一つの本質ではないかと思う。

世界一有名な町工場のおじさん・植松努さんの「いじめ論」に考えさせられる

『お前達に興味ないし用事もないから俺に関わらないでくれ』と言えて、相手がそれを素直に受け容れるなら、そもそも一方的にいじめられる関係が成り立ってない。いじめの被害者の自分に興味・用事がなくても、加害者の相手グループに興味・用事(娯楽・利益)があって自分の意志・都合だけで縁を切れないのがいじめでは。

古来より『他者とつながる縁結び+他者から遠ざかる縁切り』は宗教的な神の仕事とされた。寺社の神域で『どうか縁を結ばさせて・どうか縁を切らせて』の無数の願いが捧げられた。いじめは『閉鎖的な逃げられない生活の場』で起こる為、かつて村八分のいじめは文字通り人を殺す力さえ持ったが、縁切りは人の難事の一つだ。

続きを読む 『いじめ問題』に対する対処法:世界一有名な町工場のおじさん・植松努氏の経験談より考察

人間関係における“必要性(互助・情義)+娯楽性(楽しみ)+功利性(損得)”の原理

かつて人間関係の多くは『所与の地縁血縁』と『人生における必要性(結婚・親戚・仕事などの付き合い)』によって規定されていて、一定の年齢以上になると『好き嫌い・趣味・楽しみだけの為に付き合ったり離れたりする人間関係』というのは原則あまり無かったのではないかと思われる。

「人と仲良くなるのが怖い」という人が抱える心の闇、3つのタイプ

人と人が付き合って関係を形成する基本原理は、以下の3つに分類できる。

1.必要性の原理……『結婚・家族・恋愛の一部・仕事・地縁血縁』などの生きていくための必要性に根ざした人間関係で、いったん構築されてしまうと簡単に離れにくいのが特徴である。

お互いに経済基盤を共有して助け合ったり、情緒的な結びつき(一方的に別れづらい情義)を作ることによって規定されるが、その関係の契機・持続は『自分の好き嫌い・選択』というより『人生・生活・世間体等の必要性』がかなりの割合を占める。

2.娯楽性の原理……一緒に活動できる趣味・遊び・食事を共有したり、共感的な会話をしたりして楽しむための娯楽性・共同性に根ざした人間関係で、『仲の良い友達・恋人(生活の共有までしない段階)・遊び仲間・知人レベル』の多くが含まれる。

娯楽性の原理は『自分が好きな相手・一緒にいて楽しい相手』を求めて、『自分が嫌いな相手・一緒にいて楽しくない相手』から遠ざかるというもので、いったん形成された関係でも一定以上の流動性があって離れることもあるのが特徴である。

3.功利性の原理……その相手と一緒にいてメリットがあるのかデメリットがあるのかという、ドライでビジネスライクな『損得感情』を背景に持っている人間関係で、冷静沈着に功利性のみに徹して関係を調整する人は『詐欺師・冷淡な人(心のない人)・強欲な人(ケチな人)・サイコパス(ソシオパス)』といった印象を強める。

しかし、功利性の原理はある程度は『必要性の原理』や『娯楽性の原理』とも重複しているし、3つの原理はそれぞれ独立しているのではなく相互に影響を与え合っているものである。

大半の人は『付き合っていてマイナスの影響ばかりしか受けない相手・一緒にいて不快感や迷惑や損失ばかりを与えられる相手』からは自然と遠ざかっていきやすいし、それは視点を変えれば『自分が不当に利用されている・相手の不満や不安、苦境のはけ口にされていて自分自身の人生を全く楽しめない』という被害者意識を煽るような関係になっているということでもある。

経済的であれ感情的(心理的)であれ情義的(責任感)であれ、『その相手と関係を継続すべき何らかの広義のメリット(情緒的な結びつき・責任感や罪悪感等も含め)』を求める傾向がゼロという人は殆どいない。

続きを読む 人間関係における“必要性(互助・情義)+娯楽性(楽しみ)+功利性(損得)”の原理

スクールカーストと擬似的な身分・立場の発生:スクールカーストがいじめと結びつきやすいのはどんな学校・クラスか?

スクールカースト的な閉鎖集団内の階層は今も昔もあるが『地位の可視化・他者への干渉』は集団毎に異なる。近代の学校・軍隊・工場の規律訓練システムは、自分と他者の立場の違いや居場所確保に過敏な人を生む。

「同調力」が教室でモノをいう…イジメの起因ともなる“スクールカースト”の構造

スクールカーストは集団内での影響力・地位の差(上下)を可視化させたものだが、こういったいじめ・供犠が発生しやすい集団は『個人の自立度・自由度が低い統制的特徴』を持つ。それぞれが自分の目標達成や能力向上を目指し、必要に応じ協力するような集団ではカーストの弊害は生じずマウンティング型の政治も抑制される。

個人行動が許される場面が少なく絶えず一緒にいなければいけない集団、常にお互いの力関係(上下)やイメージ(キャラ的役割)に配慮したコミュニケーションが求められる環境、自分がその一員である帰属感の強い自由に抜けにくい集団では、『異質な者・空気を読まない者・上下の秩序を乱す者』は差別・排除されやすい。

続きを読む スクールカーストと擬似的な身分・立場の発生:スクールカーストがいじめと結びつきやすいのはどんな学校・クラスか?

子供のネット依存症の問題とインドア・アウトドアのバランス, トイレの手洗いについて

子供のネット依存6.4%はむしろ少ない印象。人の脳はネットとの相性が良く認知拡張的に耽溺しやすい。子供はネットでのやり取りであっても『リアルの人間関係の延長の問題(連絡が遅いとか無視したとかから始まるいがみあい)』が絡みやすい。

「ネット依存」の小中校生6.4%、「日常生活でイライラ」ネット上でトラブルも…兵庫県の初調査で判明

ネット依存症と一括りにいっても、『リアルの人間関係・経済との相関が強い依存性』『バーチャルなゲーム・映像や文字のコンテンツとの相関が強い依存性』『ポルノ・出会い系との相関が強い依存性』など様々あり、『物理・知覚的な世界(リアルな生活・仕事・対人)』への適応性がどれくらい障害されているかが問題となる。

ウェブのディレクターやプログラマー・SE、ゲーム開発者などIT関係の仕事の人が、毎日長時間ネットをしていても睡眠時間が確保されていて健康状態が維持されていれば『ネット依存症』の精神病理とは言わない。ネット依存の不適応は『義務的なリアルの時間割設定や行動様式に従えない・心身の健康を崩す』に集約される。

続きを読む 子供のネット依存症の問題とインドア・アウトドアのバランス, トイレの手洗いについて

現代ではなぜ女性は結婚を失敗したと思いやすいのか?:未婚化・晩婚化のリスクとしくじり婚の不安

思い通りにならぬものの代表が“他者・お金”だが、結婚は『配偶者という他者・生活と人生設計のカネ(仕事)』とリアルに向き合う日常とその変化である。『相互の期待・依存と価値観・行為のバランス』が崩れれば苦悩が生じる。

しくじり婚が3割も!? 30代女子の5割が1年目で結婚を後悔って…

結婚を選択と捉え自己責任を感じるなら、約3割が『しくじり婚』だと思っても不思議ではない。『別の相手も選べたはず・相手が強く押してきたからOKしただけ』等の選択肢のあった過去に意識が逆行できるからだが、反対に結婚を義務・人生を運命と捉える人は『その道以外はなくこうなるべくしてなった』と考え後悔もない。

30代女子で結婚を後悔したという人の多くは、『受動的に選択しただけの結婚』というある種の精神的な逃げ場、夫側の責任の相対的重さを準備していたとも言える。『相手のせいで自分の人生・結婚が狂った』と言える為には、『相手の圧倒的な落ち度・ウソ』か『自分の大幅な受身・譲歩』かの前提が要るからである。

結婚生活とは修行だという益体もないフレーズもあるが『変わらず愛され続ける人生』や『結婚前よりも面白くて楽しい生活や育児』を結婚に期待しても、よほどの幸運(あるいは婚前の極度の悪条件)に恵まれた人か、二人の生き方の相性抜群で楽観的に物事に対処できる人(苦労を苦労と思わない生活向き)でないと無理なのだ。

続きを読む 現代ではなぜ女性は結婚を失敗したと思いやすいのか?:未婚化・晩婚化のリスクとしくじり婚の不安