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浅田真央と金妍兒(キムヨナ):伝わるフィギュアスケートの緊張感と近代オリンピックの精神性

浅田真央選手がFPで自己最高の142.71点をマークする素晴らしい演技を見せて、SPの不運を払拭するような満面の笑顔を浮かべた。順位も16位から10位まで大幅に上昇させた。キムヨナ選手はSPとFP共に安定感のある演技を見せて銀メダルを獲得、競技種目の総合成績ではライバルとして並べられることの多い浅田真央を上回ったが、二人の選手の演技はメダルの有無・点数の高低だけでは測れない素晴らしいものでもあった。

フィギュアスケートという競技種目は、横に並んだ相手と直接競い合うスピードスケートやスノボークロスなどと違って、『観衆に見られる自分の意識との戦い』がダイレクトに結果に結びつく種目、横にいる相手に負けまい(抜かせまい)とする剥き出しの闘争心ではなく、『高度な自己制御・自己管理』が常に求められる緊張度の高い種目だと感じる。

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そもそもフィギュアスケートは、スノボークロスのように自分の横で同時に競い合っている他の選手がいない、自分の順番が回ってきた時にどの選手も自分一人で滑って観客が注視する中で最高の演技をしなければならない(スノボーハーフパイプなど同じような種目は他にもあるが)。

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慶応大生による自殺教唆事件:『言葉の暴力』で限界まで追い詰められてしまう人・精神状態

自殺教唆というのは非常に発生率(逮捕件数)の少ない犯罪であるが、それは通常、『自殺しろ(自殺したほうが良い)』などと人に言われても、素直にその言葉に従って自殺する人が極めて少なく、また他人に自殺を意図的に教唆しようとする人も少ないからである。

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この事件では、別れ話を持ち出した女性のほうが、振られた男性(別れを告げられた側の男性)から自殺を教唆されて飛び降り自殺を決行していて不思議な感じもするが、元々、この容疑者男性と恋愛をしている最中から、『自殺をしてもおかしくない弱った抑うつ的・自己否定的な精神状態』にあったか、何度かの自殺未遂(あるいは自殺企図にまでは至らない自傷行為・希死念慮の打ち明け)などを起こしていた可能性が想定される。

別れの原因が何だったのかは不明であるが、容疑者との恋愛関係におけるDV・モラルハラスメントの可能性も含め、『付き合っていること(相手の言動・態度)による精神的な不安定さ・混乱・自己否定』があって、別れ話を切り出す時点で相当に精神的に不安定だった(それ以上の精神的攻撃やストレスを受けると持ちこたえにくい精神状態だった)のではないかと思う。

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『アラブの春』を寒風に変えたシリア内戦の泥沼2:アメリカ主導の中東民主化の機能不全と大国の中東政策の自己矛盾

シリアは前近代的な家産的官僚制に支えられた王政(アサド一族の王権)であるから、王政を転覆しようとする反体制運動を暴力で鎮圧することに躊躇がないし、アサド政権に味方する軍・治安部隊も『国民の保護者・奉仕者としての意識』をそもそも持っておらず、『アサド家の軍隊としての意識(前近代的な専制君主やその体制に忠誠を誓った軍隊のような意識)』のほうが強いだろう。

『アラブの春』を寒風に変えたシリア内戦の泥沼1:アラブの春の総体的な挫折とシリアの国民アイデンティティの分断・拡散

国民を守るための軍隊なのではなく、アサド家の王政的な体制を守ための軍隊としてしか機能していないことからも明らかであるが、アサド大統領の独裁体制が長らく国際的にも承認されてきた理由の一つは、『シリア・ムスリム同胞団の防波堤(イスラム原理主義勢力の抑圧体制)』としてアサド体制が機能していたからであった。

中東の国々が民主化して世俗主義(ある意味では親米・国際協調路線)の独裁者を追放すれば、大衆が素朴に信仰しているイスラームの影響はどうしても強くなり、正当な選挙を行えば『ムスリム同胞団の宗教政党』が勝って、次第に政教一致体制・反資本主義(反グローバル化)の宗教国家の趣きが強まっていく。

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『アラブの春』を寒風に変えたシリア内戦の泥沼1:アラブの春の総体的な挫折とシリアの国民アイデンティティの分断・拡散

北アフリカの大国エジプトが、長期独裁を敷いていたホスニー・ムバラク大統領を追放したことで、チュニジアから始まった『アラブの春』の風は更に勢いを増すかに見えたが、シリアのバシャール・アサド政権の強大な軍事力と体制の前に民衆が起こした独裁打倒の春風は押し返された。2011年3月から始まったシリア内戦は『今世紀最大の人道危機』として吹雪のような寒風を吹かせ続け、シリア国民は同じ国民を14万人以上も殺害して、200万人以上ものシリア国民が自分たちの国を捨てて難民と化した。

いったん独裁を崩して民主化に進むかに見えたエジプトやリビアでも、『軍事独裁・部族政治(宗教政治)へのバックラッシュ』が起こり始めており、『民主的な普通選挙の結果・イスラム宗教勢力(個人の生活面まで規制する宗教原則)の台頭』が気に食わないとする民衆が暴力的デモを起こした。エジプトでは民主主義政治を暴力・威圧の実力でひっくり返せる軍部(世俗派)を支持する動きが強まり、軍部と大衆がリンクすることで『選挙で選ばれたモルシ大統領』をムスリム同胞団の傀儡(世俗主義を否定したり経済状況を悪化させる敵)だとして追い出してしまった。

エジプトやリビアにおける民主主義の機能不全は、北アフリカや中東のムスリム国家が『近代化を可能とする自律的・民主的な個人』によって構成されていないことの現れでもある。端的にはシリアもそうであるがこれらの国々では『自律的な個人の観念・判断』などは存在せず、『部族集団の一員・宗教団体の一員・軍部の一員』といった強力かつ変更困難な派閥意識(利害関係)が先にあって、エジプト人やシリア人といった『統合的な国民アイデンティティ』は自明かつ持続的なものには全くなっていない。

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台湾海峡問題の緊張緩和と民主的意思決定に抗えないアメリカ

中国と台湾との外交関係の緊張は、中国が台湾を強制的に武力征服することが可能な『軍事力の近代化(1000発以上のミサイル配備)』を終えると見られた2000年代後半にピークに達した。

アメリカは中国に対して、もし台湾にミサイル攻撃を仕掛けて武力で併合しようとするようなことがあれば、米軍は即座に台湾を軍事支援して独立を守りきる(米国には台湾の民主政体を防衛する義務がある)という通告を出し、日本でも台湾海峡危機を見据えた米軍に協力する有事法制(周辺事態法)が制定されたりもした。

台湾海峡問題は長らく、沖縄県に駐留する在日米軍・第七艦隊の存在意義の一つであると同時に、中国共産党(毛沢東)と国民党(蒋介石)の内戦という負の歴史が残した東アジア混乱の導火線であった。

だが、2008年に国民党の馬英九(対中融和派)が台湾の政権を取ってからは『民間経済(貿易・投資・観光・人材)の交流拡大路線』に転向し、中国大陸との政治的な独立を巡る争いは棚上げされた形となったため、台湾人の大陸に対する印象も以前より改善しているとされる。

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建国記念日と日本成立にまつわる歴史観・共同幻想:政治的な愛国心の問題と自然発生的な愛国心の涵養

史実(実在する王朝・天皇)ではなく記紀の神話(実在しない神武天皇)に基づく『建国記念日』にしても、『日本』という国号そのものが使用され始めたのが飛鳥時代の7世紀後半であることを考えると、『仮想敵な国家の歴史(伝統)の長さ』の喧伝としての意図を持ち、国民に『天皇の祖先の出現と日本の国の成立が同じ(天皇なくして日本なしの国家観)』だとする神話的な共通認識(森喜朗元首相の神の国発言が完全に荒唐無稽だとは言えない根拠)を形成させるものになっている。

『政治的な愛国心』にはどうしても『外部(仮想敵)との戦い・排他的な結束』を前提としやすいリスクがあるが…

日本が有史以前の昔から、天照大神やニニギノミコトの血統を継ぐ神々の子孫が統治する国としてあった『神国(普通の人間の権力者が作った国ではなく神の子孫が作った国体は永久不変のもの)』だとする共同幻想に訴え掛ける情緒的・歴史的な魅惑が、建国記念日のバックボーンとして絶えずある。

天皇家の神話的な支配王朝の正当性と近代国家の日本の歴史性を重ね合わせる『皇国史観』は戦後日本において乗り越えられたと思われている歴史観だが、そうであっても日本史は『歴代天皇の系譜・元号・権威』と切り離して考えることが難しい事情がある。

『天皇制』を日本の国体の本質に据える皇国史観とその下で導き出された国民の自発的とされる愛国の現れの忠誠・貢献の集積が、アジア太平洋戦争の愛国心教育に基づく絶望的な自己犠牲の強制、アジア全域に対する日本人の特殊的優位の感情(遅れているアジア諸国を日本が支配し主導する大東亜共栄圏の夢想)を生み出していったわけだが、『自民族中心主義(仮想敵の設定)』に傾かない自然な愛国心を涵養して、国際的な協調路線を歩むためにはそれ相応の歴史観・価値観の下地がなければ難しい。

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