人間社会は戦争・犯罪・刑罰(娯楽・公開の見せしめ)で人を殺してきたが、無条件に生存権を保障する近代の『人権思想・死刑廃止』と更生困難な悪人は吊るせの『報復・排除の本能』の葛藤は続く。
元裁判員「自分は人殺しだ」 石巻3人殺傷、死刑確定へ
煮ても焼いても食えない利己的・嗜虐的な殺人者は、息の根を止めて殺すしかないとする人間の動物的・自衛的本能は現代でも強い。『情けをかけ助けようとした悪人』が隙をついて刃物・拳銃でこちらを殺そうとし、二度の情けはないと主役が拳銃で額を容赦なく撃ち抜き処刑する図式は人間心理を爽快にさせ拍手喝采を送らせる。
死刑肯定論の原型は『情状酌量で助命しても反省せず再犯の恐れが強い悪人』は情けをかければ裏切られるから(神妙な表情の裏で舌を出すから)吊るすしかないとする図式、もう一つは『被害者遺族・社会世論の報復感情』を権力は代理的に満たさなければ社会正義の執行・信賞必罰の均衡を崩すという図式で支えられている。
死刑廃止論は『人間には生まれながらに不可侵の人権・尊厳が備わっている(人が人の生命を奪う事は許されない)の前提』を置き、『殺人者には人としての良心・共感・自制を喪失するだけの不利な事情』があったはずと情状酌量の助命要因を仮定する。『人は更生教育・愛情・承認の関係性で変われる可能性』を持つとする。
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オマル・マティーン容疑者は過去にFBIの聴取を受けIS(イスラム国)の過激思想に影響されたと言われるが現状ではISから指示を受けた形跡はない。同性愛嫌悪・社会憎悪・自暴自棄を根底に持つ国産・ローンウルフ型のテロのようである。
米フロリダでの銃乱射事件、断固として非難=菅官房長官
フロリダ州オーランドの銃乱射事件は米国史上最悪の50人の死者を出したが、ゲイ向けナイトクラブの閉鎖空間で連射した為に犠牲が拡大した。ISはマティーンをIS兵士とする声明を出しているが、『米国の既成秩序の破壊』に賛同する思想的傾倒・忠誠はあっても、テロネットワークの直接の指示命令は確認されていない。
オーランド銃乱射事件後、カリフォルニア州サンタモニカでゲイプライドパレードに向かう車内にライフル、大量の弾薬、爆弾の材料を積んでいたジェームズ・ハウエルという20歳の男が逮捕された。テロ計画の供述はないが、米国ではLGBTの権利を認める運動が盛んな一方、テロも辞さない過激な反対や嫌悪も根強くある。
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現代の経済成長・人口動態が停滞した『福祉国家・老後保障制度の不幸』は、生まれながらに80~90代まで生きる計画経済に嵌め込まれ、20代でさえ『老後が心配な老人の精神』に侵されて守りに入りやすい事だろう。
<老後の不安>非正規労働者は76% 正社員69% (毎日新聞 – 06月06日 10:52)
超高齢化社会・福祉国家の連動は、ただ高齢者が増え経済が停滞するだけでなく、メンタル面のアグレッシブな若者が減る副作用がある。20?30代から『財政危機・高負担を前提とする計画経済・予定調和』のフレームワークで考えざるを得ないから、資本主義の先進国も実質は身動きできない社会主義の末期状態に陥る。
現在の国家予算のうち約5割は『国債償還費・社会保障費』だが、社会保障負担は一般会計よりも特別会計のほうが大きい。保険料負担を含む社会保障総額は年間100兆円を超えた。一般会計で年1兆円増える、トータルでは年3~4兆円で社保コストは増える、今不十分とされる年金・医療介護の現状維持も相当な負担増が要る。
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スイスのベーシックインカム(BI)法案が反対多数で否決された。完全BIは巨額予算でそれ以外の社会保障を削減してしまう。更に安価な娯楽の多い(時間価値の高い)現代では、大勢が節約生活に走って労働意欲も落ちやすいから、現時点では持続しない『実験的ユートピア思想』に近い。
スイスで最低限の所得保障めぐる国民投票、反対多数で否決
自己の経済的利益を最大化する為に効率的に行動するという、近代経済学の経済人の前提が通用しないのが、成熟経済状況の過去の富・インフラに依存した高度情報化社会でもある。最低限の生活水準を満たす完全BIではなく、生活援助の部分BIのほうが現実味はあるが、完全BIの強みは行政コスト削減にあるとは言われる。
理論的には日本の物価水準に当てはめて月額二十万円以上を全員に支給するような『完全BI』に実現可能性が出る社会は『労働のロボット化・AI化などによってどんなに働きたくても無給でも人が働けなくなった社会』だろう。人にしかできない社会的需要の大きな仕事が多い社会では完全BIは労働供給減の副作用が出るはず。
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日本人の文化や感性に合わせた『折り鶴』の贈り物。オバマ大統領にとっては政治的レガシーや日米関係強化の実利もあるが、米国の歴代大統領の中でも特にヒューマニズムや理想主義が強い人物だろう。
オバマ氏「実は折り鶴を持ってきました」 原爆資料館で (朝日新聞デジタル – 05月28日 21:09)
だが米国でオバマ・バッシングやトランプ旋風が巻き起こっているように、オバマ大統領のような『相手国の立場もある程度斟酌しながら一般的基準に照らして判断しようとする姿勢』が、米国内で『優柔不断で弱腰・米国人より外国人を優先する利敵行為(もっと国益・国民を優先せよ)』としてネガティブに取られる事も増えた。
格差拡大や失業・貧困の増加が『アメリカの斜陽』の空気を生みやすくなっており、世界秩序に対する一定の責任と役割を自覚してきたスーパーパワーであるアメリカの外交政策やバランス感覚が変化してきている。一部の国民は『ゼノフォビア・ユニラテラリズム・移民排斥の孤立主義』を主張し、多民族国家アメリカの分断も進む。
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米国大統領の広島訪問・原爆被害者の慰霊に対する米国内の保守派の反対は強く、核廃絶・人権尊重を掲げたリベラルなオバマでなければ決断は難しかっただろう。オバマの理念と慰霊の意志を歓迎した。
オバマ氏歓迎一色に違和感 ゴジラ描いた核の恐怖どこへ (朝日新聞デジタル – 05月28日 15:57)
オバマが広島を訪問し『原爆投下の歴史的正当性・日米戦争における日本側の道義的責任』を訴えたなら、激しいバッシングが起こるだろうが、オバマは原爆投下を指示した1945年のルーズベルトやトルーマンではない。むしろ核兵器廃絶の方向性を示し、原爆被害者の慰霊、同盟国への共感を見せた。
戦後70年が経過し、先の大戦の当事者性が薄れ、何人もの政治指導者が入れ替わった現代で、過去の戦争から学ぶべき事は『お互いへの怨恨・責任追及を蒸し返す事』では断じてない。戦後の日米は、過去の戦争の遺恨・報復に拘泥せず自由民主主義・人権を共通理念として互恵的・未来志向的に発展を遂げてきた経緯を持つ。
オバマ大統領の広島訪問や原爆被害者への追悼に対し、『日本は原爆で犠牲者を出したかもしれないが、アジアに対する加害者であることを忘れてはならない』という中国の残念な発言があった。日米のやり取りは『加害者・被害者の立場を超えた人類の普遍的な人道主義』に立脚しており、核保有の中国も無関係な話ではないのだ。
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